朝食とワイン
12月24日、午前10時半。
爆音のアラームと共に目が覚めた僕は、
昨日の夜、2年付き合い続けた彼女に
「別れよう」の4文字を送ったことを思い返していた。
体を起こそうとすると、いつもより軽いことに驚く。
「よーし、いい目覚めだっ。」
胸を張って、ベッドから降りる。
今日はなんだかとても清々しい気持ちで、朝食は数年ぶりに自炊するか、なんて思う。
お米を研いで、冷蔵庫に入っていた鶏肉を火にかける。
「昼間っからワイン、飲んじゃおっかなあ」
棚の奥にしまっておいたワインを手に取って、グラスを用意する。
――そうだ、カマンベールチーズもあったんだ。
無駄に片付いているリビングのテーブルに
ワインとチーズ、それに作った朝食を並べて、軽い手つきでテレビをつける。
「あ、見たかったドラマの再放送!」
今日はツイてるのかもしれない。
ご飯と鶏肉を口にして、チーズをひと口食べた。
それからワインを口につけて、香りを楽しむ。
朝食を食べ終わる頃にはもう酔っていて、
気分がとてもよかった。
お笑い番組に切り替わったテレビをぼーっと見ては内容も理解できず、ただ人の笑い声で笑えちゃうくらいには―――気分がとてもよかった。
久々に自分の部屋でゆっくりできて、チューハイじゃなくてワインを飲めた。
自分の見たい番組を好きなように見れた。
足を伸ばして、好きなように過ごせた。
『別れてよかった?』
脳裏に浮かぶ彼女が問いかけてきた気がした。
「よかったよ。そりゃあ。」
『どこが好きだった?』
「最初からどこも好きじゃなかったよ」
『じゃあどうして告白したの?』
「君が俺の事好きって知ったからさ」
『どこが嫌いだったの?』
「どこも嫌いじゃなかったよ」
『普通だった?』
「そうさ。好きでも嫌いでもない普通。無関心ってこと。」
『無関心で2年も付き合えるの?』
「別れるって言ったらめんどくさそうだったからね。ヤらせてくれるし、好きにさせてくれるし別れる理由はなかったから。」
『じゃあどうして泣いてるの?』
………………。
救急車のサイレンの音で目が覚める。
気がついたら、明るかった部屋は真っ暗になっていた。
昼間からお酒を飲んだせいか、頭がガンガンに痛い。
ふとベランダの外に視線を移すと、
マンションの入口のあたりに
赤色の光がチカチカと輝いていた。
「あいつ、今頃何してんのかなあ。」
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