愛してるが欲しいだけだった。
ミマル
第1集 失恋
オトナ
チューハイとマンション
焼ける程の眩しい日射しが全身を刺してくる。
真っ暗だった視界が明るくなり、覚めてしまう。
まだ目が明るさに慣れず、目がしばしばとしている中、必死にスマホの画面を見た。
〈12月24日〉
〈14:38〉
ただ、ただ。
その日付と時間の表示が、私の心をきつく絞めて離さない。
「……」
苦しみでため息すら出ない。
無理に体を起こしてみるが、くらくらしてしまい、結局仰向けに戻る。
「これは……夢だ……」
瞳を閉じて、夢だと信じてみる。
――だって、本来ならば。
今日は記念日で。
今頃ソラマチのレストランでランチを食べていて―――。
夕方になるまでプラネタリウムを見て、日が暮れたら展望台に上がって夜景を眺めて……
お台場の高級ホテルで、共に―――。
なんて、幸せに満ちていただろう。
……瞳を開けてもそのランチの光景はなく、あるのは虚しい天井だけだ。
もう一度スマホに目を移す。
画面に写る、「プラネタリウムキャンセル確認メール」の通知が余計心を刺してくる。
私が君に絶対言わなかった、言えなかった4文字の言葉を、君は呆気なく言ってしまったんだ。
始まりと同じ、メールで。
「わかってるよ……」
広すぎるこの部屋でそっとつぶやく。
誰もいない、この部屋で。
枯れているような、掠れた声で。
きっと、鏡を見れば目はめちゃくちゃ腫れてるだろうし。
喉は痛くて仕方がない。
食欲はびっくりするくらいないし、むしろ吐き気があるくらい。
髪はボサボサだし、鼻は詰まってる。
「わかってるよ…」
再度呟いて、私は毎日起きてからの日課のスキンケアとストレッチをサボり、
洋服などが無残に散らばった――ぐちゃぐちゃになった部屋の床を踏み潰して、
冷蔵庫の扉を開いた。
無駄に買い貯めてある、大好きなチューハイ缶を取り出す。
ソファーに無理矢理座って、缶を開ける。
――昼間からお酒を1人で飲むなんて、なんて惨めなんだろう。
笑いすら起きてしまう。
ふと正面に目を移すと、真っ暗なテレビに反射した自分がまるで病んだ人間に見えた。
――もういっそ、壊れてしまおうか。
一瞬、まるで幸福な感覚が脳内を走った。
惨めな自分が、可愛くて仕方なく思えてきてしまう。
このまま、
酔えばきっと、全てを忘れられる。
それで、いいや。
グビっと一気に飲んだチューハイは、人生で1番美味しく感じられた気がした。
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