その知らせは彼方から

「何それ手紙?あ、もしかしてこの前の人たちのヤツ?」

「俺宛のものだ。覗き込んでくるな」

 邪魔だと手で振り払えば、軽くのしかかって来た男は仕方無いと言わんばかりに剥れる。睨んでも堪えた様子は無い。

「ちぇー。オレだってあそこ一緒に居たんだからいーじゃんかー」

 タツヤのケチ、と唇を尖らせてみせる千鳥を無視して紙面へと目を落とす。

 黒いインクで綴られた端正な言葉が綴られていた。その下には、陽を思わせる色で書き記された一枚が潜んでいる。

 内容としては彼らの近状を伝える、言ってしまえば他愛のないものだったが。それらは掛け替えのない価値を持つものだと、辰哉には分かっていた。

 そして。その二通のものの下に隠れるように、もう一枚。

 合計で3通ある手紙にじっくり目を通した後に、辰哉は呟いた。

「……返事を、送らなければならないな」

 それが礼儀だろうと、堅物の男はほんの僅かに目の色を和らげる。些細な変化に気付いた千鳥もまた、柔らかな笑みを浮かべたのだった。

「そうだぞー。ちゃんと丁寧に書くんだぞ。ただでさえお前、言葉が足りないって常々言われてるんだからな」

「どの口が“丁寧に書け”なんて言うんだ……」

 小言を零しながら、辰哉は引き出しから白いシンプルな便箋とペンを取り出す。遠い世界に生きる戦友への手紙を認める為に。

 あの時の感謝を。『二人と、仲間として共に戦えてよかった』と。辰哉はまだ、彼らに伝えていないのだから。

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