デート
大学2年の新学期が始まって亮は
薬学部の下村教授に呼び出された
「團君」
「はい」
「君はまだ2年生だが卒業後どうするつもりだ?」
「はい、DUN製薬の研究室に勤める
予定で大学院でお世話になります」
「うん、実は君の書いた
『結核に関する和漢方の効果』のレポートと
『漢方薬の糖尿病治療』に関するレポートを読んだ」
「はい」
「君はまだ専門課程を学んで1年しか経って
いないのに、どうしてあんなレポートが
書けるんだ?」
「はい、医学書を読んで独学です」
「そうか・・・2つともすばらしい
レポートだ。と言うより論文だ
すぐにでも学会で発表すべきだ」
「教授、このレポートはまだ臨床していません」
「うん、薬の難しい所は臨床データ、治験が必要だからな」
「はい」
「臨床に関しては私も協力しよう」
「ありがとうございます」
亮は嬉しさでいっぱいだった。
あの沙織が苦しんだ白血病を治せるなんて
夢のようだった。
「それと團君、君の成績オールAでテストの成績はトップだ」
「はい」
「それで日本史の中川教授が用があるそうだ」
「中川教授ですか?」
「今、いるから教授室へ行きなさい」
「はい」
亮は呼ばれた意味が分からず首をかしげて
中川教授に部屋に入ると中川は笑顔で迎えた。
「ああ、待っていたよ。團君」
「何の御用ですか?」
「君の書いた江戸城開城の
小栗忠順についてのレポートなんだが」
「はい」
「私の知っている限り小栗忠順に
関してこんなに詳しい話を聞いたことは無い
嘘や空想ではこんなにしっかりした
物は書けないと思うんだが」
「嘘ではないです」
「では資料は何処から入手したのかな?」
「はい、ある古文書からです」
「古文書?」
「ええ、團正志斎が書いた物です」
「團正志斎って?」
「はい、当時御典医で僕の先祖です」
「な、なるほど。もし良かったらもっと詳しい資料があったら」
「はい、探してみます」
亮が持っている古文書には将軍や
他の人間の今で言うカルテがあったが
それを公表すると大変な事
になると思ってその公開を伏せたかった。
中川教授はニコニコしながら亮に聞いた。
「古文書の解読は自分でしたのかね」
「はい」
「今度、時間があったら手伝ってくれないかな」
中川教授は自分のテーブルの上にある数十冊ある古文書を見せた。
「はい、ぜひ」
それを見た亮は嬉しそうな顔をして教授室を出た。
ある日、秋山良子は亮をディズニーランドに誘い
女三人男三人の六人は舞浜駅で待ち合わせした。
良子の図書館に一緒にいた岩倉弓子と大学の友達田中瑞江は
亮を見て胸を時めかせた。
「ねえ、良子の彼素敵じゃない」
瑞江は良子の耳元で囁いた。
「あ、ありがとう」
亮は入場するとすぐにマップを持ってスケジュールを立てた。
最初、五人は驚いていたが亮の見事な時間配分と
男性が走り回ってファーストパス有効に利用して
待ち時間がほとんど無い動きに女性たちは亮に憧れていた。
6人は食事のためにレストランに入ると瑞江の彼の岩倉が言った。
「團さんって凄いですね」
「あ、ありがとうございます」
亮は何が凄いか分からないが礼を言った。
「ディズニーランドに二人で何度も来ているんですか?」
弓子が良子に聞くと良子は亮の腕を掴んだ。
「あっ、二人では初めてよね」
「あ、そうですね。二人では」
実は亮はディズニーランドに来るのは初めてで
前日ディズニーランドの情報を収集していた。
「團さんは東大なんですよね」
佐田は亮に尊敬の念を抱いた。
「ええ」
四人は亮を気に入り次々に質問をしていった。
「あのう、私の妹今度受験なんですけど、
勉強教えてもらえませんか?」
弓子に頼まれオドオドしていると
良子は初めて亮をアキラと呼んだ。
「大丈夫よね、アキラ」
「は、はい。時間が合えば」
「本当ですか?何が得意なんですか?」
「何でも大丈夫だと思います」
「弓子、俺には何も言わなかったじゃないか」
弓子の彼氏の佐田が笑いながら
文句を言うと弓子は笑いながら答えた。
「だって、東大と博の行っている
2流大学じゃレベルが違うもの」
「あはは、今じゃ俺2次方程式も解けないかも」
佐田と弓子が笑うと瑞江と岩倉が笑った。
亮は勉強の話を話題にして話したが、
レストランの窓からディズニーランドの
アトラクションとキャストの動きを見ながら感動していた。
「ところでミッキーマウス何人いるのかしら?」
良子が言うと亮が簡単に答えた。
「一人です」
「ええ?だってあちこちにたくさん居そうじゃない」
良子が不思議そうしてしていると亮はショーの
スケジュール表をみんなに見せて言った。
「ミッキーの登場のダブリが無いんですよ。
最初はみんな悩みますけど」
「ほー」
みんなが納得してうなずいた。
この時、亮はしっかりと夢の世界のコンセプトを貫く
ディズニーランドの経営を尊敬した。
「どうしたの?アキラ」
良子が亮に声を掛けると亮は時計を見ていった。
「さてパレードに並びましょう」
「シートを敷いて席を取ったら1組ずつ、
好きな所へ行く事にしましょう」
亮が言うと弓子が提案した。
「じゃあ、カップル交換しようよ」
亮はカップルになった弓子と一緒に
買い物に出かけると異常に身体を寄せてきた。
「團さん良子とどれくらい付き合っているの?」
「2ヶ月です」
「ああ、そうなんだ」
弓子は亮と良子の関係が
ギクシャクしていのに気づいて
いた
「岩倉さんは?」
「私は1年」
「そうですか」
亮は付き合いが1年の雰囲気がそんな物かと
思っていた。
「岩倉さん付き合うってどういう事ですか?」
亮は首をかしげながら聞いた。
「それって、関係が有るという意味?」
「あっ、やっぱり」
「まさか、團さん童貞って言う訳じゃないわよね」
「いいえ、女性経験はありますよ」
亮は男女が付き合うという意味は肉体関係で、
秋山と自分はまだ付き合っていないのが
分かった。
「團さん、妹の事本当にお願いね」
「いいですけど、僕も学校があるので
家に来てもらえると有難いんですが」
「いいの?迷惑じゃない」
「大丈夫です。その方が心配じゃないですよね」
「は、はい」
弓子は亮に接近できるのが嬉しかった。
「今度、みんなで飲みに行きましょう」
弓子は親しげに誘ったが亮にとって
19歳はお酒を飲む年齢ではなく、
まして酔って意識がはっきりしない
人の集まりは想像も出来なかった。
~~~~~~~~
良子と岩倉は席取りシートに座ってポップコーンを食べていた
「良子ちゃん、彼とどれくらいの付き合いなの?」
岩倉は他の二人の女性に比べて大人っぽい良子が気になっていた
「2ヶ月くらい」
「そうか、じゃあまだか」
岩倉はニヤッと笑った。
良子が返事をしないで居ると岩倉はニヤニヤと笑っていた。
「彼、頭はいいけど女性の付き合いは下手そうだね」
良子はそれに対しても返事が出来なかった。
「欲求不満にならない?」
岩倉は良子の耳元で囁くと良子は返事に困っていた。
「そんな・・・」
岩倉は良子のミニスカートから出た太ももと
細く締まった足首を見ながら
体の線を想像していた。
~~~~~~~~~
「お待たせ」
亮と弓子が戻ると弓子は周りを見渡した。
「あれ?瑞江と佐田さんは?」
亮が聞くと良子と岩倉は首を横に振った。
パレードが始まる寸前に二人は戻ってくると
亮は瑞江と佐田の二人の様子が明らかに
変わったのに気がついていた。
それぞれ、元のカップルに戻ると
佐田と弓子、岩倉と瑞江はシートに座りながら
体を寄せ合い抱き合っていた。
亮はその風景を大好きな洋画のようで憧れの目で見ていると
良子は亮の肩に頭を傾けた。
「あっ」
亮は小さな声を上げ、胸の鼓動が高鳴り良子の髪のいい香が
頭にめまいを起こさせ手に汗をかき、目の前を横切る美しい光を放つ
パレードの動きが時々とまって見えた。
亮と良子の距離の近さはそのまま帰りの電車でも続き
池袋駅で二人が別れるまで良子は亮の腕を離すことは無かった
亮はアメリカ映画のように男女が簡単に好きになってキスをしてしまう
感覚は自分の中では信じられず、あくまで理想の話だと思っていた
しかし、今日自分が感じた良子の甘い香、時々触れる良子の皮膚の感触と
やわらかさ、これは恋であるかただの男の欲望か理解できなかったが
とても心地よかった事は事実だった。
その夜、亮が帰ると千沙子が亮の部屋の前で声を掛けた。
「お帰り、どうだったディズニーデートは?」
「楽しかったよ姉さん、僕達の年齢で『付き合っている』という言葉は
どう言う意味なのかな?」
「あはは、初めて聞いた。亮のその手の質問」
亮が照れていると千沙子はえらそうに答えた。
「社会人で付き合っていると言えば、もしかしたら結婚前提と感じだけど
学生はまだ相手を養う力も無いし、まだ進路も決まっていないから
取り敢えず男と女がくっついたって感じかな」
「とりあえずか」
「友達か?恋か?まだ分からないでしょう。時間をかけないと」
「なるほど、さすがだね。姉さん」
「任せておいて、友達の恋愛相談屋だから」
千沙子は舌を出した
「ところで、姉さんの方は?」
「うふふ、イケメンの弟とかっこいい
父親を持つと理想が高くなるんだ」
「美佐江姉さんは?」
「あの人は自分以上の相手を探しているけど、それも難しいね」
「あはは、なるほど」
「ところで、亮。秋山さんとやった?」
亮は千沙子にいきなり言われておどおどしていた
「ま、まだだよ」
「秋山さんは歳の割りに色気があるから、誘惑が多いわよ」
「うん、そんな気がする」
「さっさとやらないと、逃げられちゃうぞ」
「やるって、責任の無いセックスはしたくない」
「相変わらずお堅いのね」
「相手の意向があるし・・・」
「そうかなあ、私が他人だったら・・・うーん亮に欲情はしないか」
「そうだね、僕も欲情しないよ姉さん」
「ん?」
「いくら弟だからって言ってもブラくらいつけて欲しい」
千沙子はノーブラにTシャツ姿だった。
「でも、いい胸しているでしょう」
「うん」
亮が部屋に入ろうとすると千沙子が声をかけた。
「亮」
「はい」
「彼女とだめになったらいつでも私の友達を紹介するわ」
「はい、出来たら・・・」
千沙子が微笑んでウインクをした。
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