パーティ

亮が2階の美佐江の所へ戻り礼を言った。

「姉さんおいしかったよ」

亮と良子が頭を下げると美佐江が急いでいた。

「亮、着替えて」

「ん?」

「久しぶりに家族でパーティへ行くよ。秋山さんもね」

美佐江は秋山の顔を見て微笑んだ。


「あっ、はい」

「秋山さんは着替えなくて良いけど。

亮はタキシードに着替えて」

「は、はい。千沙子姉さんは?」

「ええもちろんよ、彼女がいれば楽しいわ」

美佐江は亮に向ってウインクをした。


亮たち三人は六本木のパーティ会場にタクシーで着くと

玄関に男が立っていた。

「いらっしゃいませ、團さま」

美佐江が入口で受付をすると亮に言った。


「お父さんは2階のVIPルームにいるわ、先に行って」

「はい」

亮と良子は2階のVIPルームはバルコニーに様になっていて

ステージと会場が見えるところだった

「おお、来たな」

秀樹と久美は嬉しそうに笑うと亮は

良子を紹介した


「はい、お父さん秋山良子さんです」

「初めまして、亮の父親です」

「母の久美です」

二人は丁寧挨拶をした。

「始めまして秋山良子です」

良子は秀樹の落ち着いた雰囲気に飲み込まれていた。


「お父さん」

「ん?」

「JP通販って知っていますか?」

「ああ、五島商事の子会社でうちの取引先だ」

「何を売っているんですか?」


「輸入家具や宝石、ブランド品だ」

「それがどうした?」

「いいえ、ちょっと」

秀樹は亮の肩を叩くと久美に話しかけた。


「さて、そろそろ行こうか。かあさん」

「はい」

亮の両親は腕を組んで仲良く

下のフロアーに出て行った。


「團君の、ご両親素敵」

「ああ、パーティ慣れしているんです。

それに主催者ですから」

「そうなの?」

「ええ、美宝堂のお客さんはセレブばかりなので

 こういうソシアルパーティの場で

挨拶と営業をしているんです」


「お仕事なの?」

「ええ、世界のブランド品の直営店は

銀座やデパートにもあるけど

 お得意様は今でも美宝堂で買っているんです」

「すごい、團君将来は美宝堂の社長になるの?」

良子は亮が医者にならなくてもいい気がした。

「いや、こんな所に来て頭を下げて歩くのは嫌です」


~~~~~~~~~~~~~

下のフロアーに降りた秀樹は客の中を挨拶して歩いていた

そこへ、パーティ会場に高田義信と川野晴美が入ってきた

「パパ、凄くゴージャスね」

川野晴美が父親の川野三郎に甘えていた


「お前も大学生になったからソシアルパーティに来なくてはな

 ここには金持ちで品のある人たちがたくさんいる」

「うん」

「高田君はなれているようだな」

「そう、彼が付き合っているのはお金持ちばかりだから」

「そうか良い事だ」

川野三郎は高田義信の肩を叩いた


「高田さん、息子さんの商売が順調だそうですね」

JP通販の高田信夫に三郎が言うと嬉しそうに答えた

「ええ、私のアドバイスを良く聞いて

しっかりやってくれています」

川野は笑いながら言った。


「それはいい息子さんだ」

「恐れ入ります」

義信が川野に頭を下げた

そこへ亮と良子がきょろきょろしながら

歩いていると、高田義信と川野晴美と目が

合い良子が会釈をすると晴美が言った。


「パパ、あの二人がさっき言っていた二人よ」

「うん、あのオドオドした態度がいかにも貧しそうだ

 まったくどうやってこのパーティに紛れ込んだんだ」

川野三郎はブツブツと文句言った。


「パパ、あの女中学の同級生だったの、

文句を言ってくるわ」

「晴美、ちょっと待て、今ライブが始まる」


~~~~~~~~~~

「秋山さん、今からライブが始まります」

ステージに立ったアーティストは人気絶頂の歌手、

REIKOだった。亮と良子は手にグラスを持って

歌に聴き入った。

そのREIKOがステージから降りると

千沙子が親しげに話をしていた。


「あれ、姉さん」

「どうしたの?團君」

「REIKOの傍にいるのが2番目の姉さんなんだ、

紹介してもらおうよ」

亮は良子に言って千沙子の方へ向かった。


~~~~~~~

「良子」

後ろから高田義信が声をかけ良子の手を捕まえた。


~~~~~~~~

「姉さん」

亮が千沙子の所へ行くと普段パーティに来ない亮に驚いていた。

「あっ、亮どうしたの?」

「姉さん、REIKOさんと知り合い?」

「うん、彼女の舞台衣装は私が

デザインをしているの、知らなかった?」

「知らなかった」

「ねえ、誰?」

REIKOが千沙子に聞いた。


「私の弟よ、東大生」

「初めまして、團亮です」

亮はコチコチになってREIKOに挨拶をした。

「わあ、イケメンね。亮君歌唄える?」

「ええ、それなりに」

「今度一緒に歌おうよ」

「はあ」

亮は突然のREIKOの誘いに唖然としていた。


「そうだ、友達を」

亮は千沙子に紹介しようと良子を探すと

姿が見えなくなっていた

「あれ?姉さん友達を探してくる」

「うん、亮に紹介したい娘がいるから」

「はい」

亮は良子を探して2階VIPルームへ行くと

良子と高田義信と三人の男が話をしていた


「秋山さん」

亮が近づいて良子の所に行くと高田が睨み付けた。

「気に入らねえな」

「何がですか?」

亮は聞き返した


「僕に恥をかかせやがって」

「恥ですか?」

「ああ、僕はお前と違って特別な人間なんだ」

義信はローラン・ギャロスで支配人に言われた

特別な人が頭から離れられなかった


「この女は僕の女だ」

義信は後ろに三人の男を連れてすごんでいた

「秋山さんは昔の奴隷じゃないんですよ誰の物って

 まして川野晴美さんがいるのに」

「ふん」

義信は鼻で笑った。

「良子は返してもらう、今夜先輩に良子に

献上するだ!女子大の理事長さんに」

義信は良子の手を引くと良子はそれを振り払おうとした。

「イヤ!」

「なんだ、嫌だと。この好きものが!」

「止めて」

良子は自分と高田の関係を亮に明かされるのを嫌がって

手を振り切って亮の後ろに回った。


「高田さんここはソシアルパーティの会場です、

みっともない事は止めてください」

亮が冷静に言うと高田が恫喝した。

「なんだと、命令するのか?この僕に」

「命令ではないです、人間としての常識です」

「おい、團。人間は生まれながらにして上下関係が出来ているんだ

 平等なんて貧乏人のたわごとだ」

「かわいそうな人ですね」

亮は義信の顔をじっと見つめると

義信はますます腹が立ってきた。


「おい」

義信が合図を送ると三人が良子を捕まえようとした。

「秋山さん下へ降りて」

亮は良子を逃がすとスプリットステップで

つま先を立て重心を前に移動すると

三人は亮を抑えようと飛び掛ってきた

「判断力とスピードと筋力」

亮の頭に祖父の言葉が思い浮かび

三人が手を伸ばす中をすり抜け一気に

1階のフロアーに下りた。


階段の下で待っていた良子は亮にしがみついた。

「團君、大丈夫?」

「はい、逃げ足は速いのでここなら

みんながいるので大丈夫です」


~~~~~~~~~~~~

「あんた、なんなの?義信を取り戻すつもり?」

晴美は鬼のような剣幕で良子の方へ来て怒鳴りだした。

「えっ?私は・・・」

「義信から聞いたわよ、誘惑されたって」

「嘘です!」

「信用なんか出来ないわ。あなたの持っているバッグだって

宝石だってどうせ偽物でしょう」

晴美がヒステリックに言うと亮が冷静に晴美に言った。


「本物です」

「ふん、男に宝石なんて分からないわよ」

「晴美ちゃん、僕は分かるよ」

義信と三人の男が来た。

「義信は別よ、プロだもの」

晴美は高田の腕を掴んで甘えた。


「あら、亮のお友達ね、姉の千沙子です。よろしくね」

そこに千沙子達が来て亮を取り囲み

千沙子は人なつっこく良子に話しかけた。

「亮、紹介するわ」

千沙子の隣にいた女性二人が亮の前に出した。

「VVのモデルの川奈ゆかりとカレンよ」


「どうも、弟の亮です」

「わあ、かわいい。千沙子の弟さん」

カレンとゆかりが亮の腕を掴むと

それを見ていた義信たちが驚いていた

千沙子は良子に気を使って話しかけた。


「ごめんなさい、友達が亮を紹介してくれってうるさいのよ」

「いいえ、お姉さん芸能人に知り合いが多いんですね」

「私ファッションデザイナーと

ファッション・コーディネーターの仕事しているの」

「えっ?大学生じゃないんですか?」

良子はあまりにも千沙子がしっかりしているので驚いていた。

「そうよ、姉の美佐江は宝石、私は洋服」

「いつ勉強なさったんですか?」

「うふふ、私は中学校の頃からパリやニューヨークへ行って

ファッションの勉強をしていたわ」


「すごい!」

良子は感動して目が輝いた

「あなたラッキーよ、うちの亮を

射止めたんだから、ちょっと堅物だけど」

「い、いえ。射止めていませんけど・・・」

良子は慌てて否定した


そこへ、晴美の父親の川野三郎が来て良子に

「こら、秋山!ここのパーティは選ばれた人間しか入れないんだ

 どうやって入ったが知らないが、君がいるとこの神聖な場所

が汚れるんだ出て行きたまえ」

川野は良子の手を掴むと亮は川野の腕をおさえた


「止めてください」

「どうせ、お前もここに入り込んで金持ちを

ナンパするつもりだったんだろう」

川野に指示をしてパーティ会場のスタッフが

来ると秀樹が川野に声をかけた。

「ずいぶん、にぎやかですね。川野さん」

「あっ、團さん。ご無沙汰しています」

川野が深々と頭を下げた。


川野はきつい目で亮をにらみつけて指をさした。

「ちょっと悪ガキが入ってきたので追い出そうとしていた所です」

「ほう、なるほど悪そうなガキがいるなあ」

秀樹は義信と晴美の顔を見た。


「おい、追い出せ」

川野はスタッフに指示をすると秀樹がそれを止めた。

「その二人、私の招待客ですが。川野さん」

「えっ?」

「しかも、あなたが腕を掴んでいる男は私の愚息です」

「はっ?失礼いたしました」

川野は血の気が引いて亮の腕を放した


「どうしたの?パパ。あのおやじ誰?」

「ば、馬鹿、うちの会社の筆頭株主様だ」

「株主って、そんなに偉いの?」

「そうだ、もう黙っていろ」

「ふん」

晴美は不満そうな顔をしてそっぽを向いた。


「亮、こちらへ」

秀樹は亮を呼ぶと亮は秀樹の脇に立った。

「うちの息子はこう言う場所が苦手なので

 初対面でしたね。以後お見知りおきを」

秀樹と亮は深々と頭を下げると川野は、ばつが悪そうに

会場を出て行った。


「お父さん」

亮は秀樹の顔を見ると険しい顔になった。

「川野はDUN製薬の常務取締役だ」

「そうなんですか」

「あいつはもう出世させないぞ、

お前がDUN製薬を仕切る時、邪魔になる」

「はあ」

「あんな高慢な男はいつか会社に害を及ぼす」


~~~~~~~~

高田義信はゴタゴタを見てニヤニヤと笑った

「ははは、これであのうざい川野晴美と別れられる」

そう囁いた。

「さて、帰ろうぜ。飲みなおしだ」

高田は後ろに立っていた三人に声をかけた


~~~~~~~~~

「亮、あの男か?」

秀樹は高田を指差した。

「はい」

「なるほど、性格が悪そうだ」

「ええ、かなり」

「亮あの男の通販会社調べておけ、

最近通販で美宝堂から買った

商品が偽物だというクレームがあった」


「うちは通販はやっていませんね」

「当たり前だ、うちの店はお客様に

似合った商品対面で販売する、

ブランドや高価な物を押し付けるような

商売はしない。それが美宝堂だ」


「わかりました」

亮はこの数日で自分の家族の繋がりが良く分かって嬉しかった。

「お父さん、さっき三人の男に囲まれた時逃げてきました」

「悔しいか、逃げてきて」

「はい」

「柔道でも剣道でも習ってこい、強くなれば女性を守れる」


「はい、さっそく明日から」

「うん、蔵の中に何振りか日本刀があったろう」

「はい」

「じいさんがお前にくれた物だ」

「はい」


「團君」

良子は亮の顔を見上げた

「はい」

「素敵な家族ね、お金持ちなのにちっとも偉ぶらない」

「祖父が厳しかったんです、金持ち喧嘩せず」

「ど言う意味?」

「経済的に余裕がある人は心が豊かなので、

些細な事でいがみ合ったり

 人を憎んだりしない。そんな所かな」

良子は亮の事が少し分かってきた。


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