第5話

俺の家は所謂名家と言うもので、戦前は地方で政治やら何やらを裏で操っていたが、戦後になって表側で活動するようになり、思いのほかいろんなところから手腕が認められ、選挙にも出るようになったと聞く。


具体的には戦後の開発経済とやらで設けることで誰も損をしない、誰もが利益を得る政治を実現してきた。


俺だけじゃない。開発をすると資金が巡り、その過程に参加したすべての者たちの懐を温める。


戦後の政治経済は言うなれば産業と輸出で稼いだ金を不動産と地域の開発に回すことで集約する。反対する人間もいるだろうが、要は形を整えて華やかな町が出来上がるのを見届けるために誰に話を通してどうやって物事を進めばいいのかを掌握することが、俺が学んだ政治だった。


だが俺が当選されるべき選挙区にくだらないことで声を上げるやつらが現れた。福祉と権利。彼らがそれを言うと偽善としか聞こえず、俺が負けるとは思えなかった。だが負けた。こんなはずがない。誰しもが求めることをやると言うのに、なぜ俺じゃなくやつを選ぶ?


ふつふつと心のうちから怒りが湧いてくる。何に対して?わからない。誰に対して?わからない。俺じゃなく当選されたあの女に怒りが向いていることはない。現実を知っていると思ったら、現実は俺のような人間の手を取ってくれると思ってたら違った。


だからだろう、家族に冷たく当たることが多くなった。財産はある。娘や下手すれば孫まで何の不自由なく生きれるようになるだろう。相続税を回避する手段なんて、知らない方がバカだ。


だが一度砕けた自尊心はもとに戻らない。お酒も増えた。


そんな中その少女は突然やってきた。


「高松沙織と申します。」


そう言って誰とアポイントを取ったわけでもない彼女は何の躊躇いもなく俺の家にずかずかと入ってきてからは俺の体面のソファに座り俺の目をじっと見つめた。


何かを刻み込まれた。これは記憶か?それとも何かに対しての感覚?わかるようで何が起こったのかがわからない。


ただどうしようもなく俺の家族が愛おしい。妻が、息子が、娘が愛おしくてたまらない。なぜ俺は今まで、くだらない選挙ごときで、人生をささげてきたとは言え、誰がやろうが俺よりましならそれでいい政治なんかに執着していたのかがわからない。


もう引退していいだろう。まだ若いが、俺は顔が聞く。コンサルティング会社を作るのも悪くないだろう。金もある、人脈もある。だがこの辺りはよくない雰囲気がする。


俺がそうしたからだろう。俺が皆を金の亡者にしたからだろう。いや、そういう人間がのし上がれるようにできていて、俺はそういうシステムに積極的に参加してきただけだろう。だからそのシステムが作った被害者には目を向けることがなかったんだろう。


だから俺じゃなくあの女が当選されたんだろう。だがそれがどうした。俺には愛する家族がいる。それでいいじゃないか。


美しく光る少女のあの薄紫色の瞳を忘れることはないだろう。例えそれを誰にも喋らないよう、あの光を思い出すたびに意識が強制的に別のものへ向いてしまうとしても。


──────



 金持ちには二種類の人間がいます。


 矛盾によって生まれた富を我が物にしてる集団と、時代に必要なものを必要な時に必要な場所で供給することで成功した人たちとその子孫。つまるところ悪人と善人ですね。そんな単純な分類ができるほどに実際見てみると単純です。


 一目でわかるほどにね。


 前者はやってることがまるでユダヤ人の地獄のように快楽と悦楽に没頭できて、モラルコードやらなにやらがおかしくなっています。目立ちたがりで自らの利益だけを求める、有り体に言えば人間のくず共です。


 にしてはお金ならたくさんあるので、つまらないことで、くだらないことで、意味のないことでお金をばらまいて自己満足に浸ります。


 特定の産業や特定の地域がそうなっているというよりどこにも社会が社会であるために支払っている負債は矛盾となりえて、そういう人間は一定数あるわけです。


 後者はまるでプロテスタンティズムの倫理を誰から学んだわけでもないのにも関わらず当たり前のように搭載していて、自分たちをただの市民として位置付けます。市民と言う名のデモ集団とはわけが違う、言うなれば昔の映画のような、市民ケーンのケーン見たいな人達です。


 あまり面白い映画でもないので簡単に言うと率直で淡白、社会の善を信じ、パブリックのための活動こそ当たり前の美徳であるとしている人達です。


 見てみると行動パターンは決められていて、少しナイーブな印象を受けます。悪意を知らないというより事業を起こすにしろ遣り繰りするにしろ真正面からぶつかるばかりで、遠回りや目的のために手段を択ばないマキャベリズムとは程遠いと言う感じです。そういう人間もどこかにいるんでしょうけどね。いや、いますね。目立たないだけでいますけど、関わりたくないですね。


 逆にそんな市民意識だけではなく目標に向かうためだけに周りを利用しようとしたり、法律の穴を潜り抜けようとすることを堂々とする人間は法で裁かれますけどね。社会は集団が犯した過ちには寛大ですけど個人の突出した行動には厳しいんですよ。


 これはどの国でも同じで、だから進歩が遅れると言ってもそれが現実だからさ、理解しないわけにはいかないでしょ。


 秩序を守って生きてる側、彼ら彼女らにとって重要なのは信頼と信用であり、ならばこそ率直さが求められるから。こういう単純な人達による繋がりは社会正義に合致していると言えるんじゃないかしらね。


 この二種類の集団がお嬢様学校だって例外なく再現されます。まだ頭の中に単純な仕組みしかインプットされてない小学生の間は大したことを考えていたりはしないもので、問題になることもないですが、中学生になった途端、はっきりとしたグループで分けられます。


 以前までは親しかった、若しくはたわいのない話題で盛り上がっていた子達は自分たちの存在のあり方の違いを早くも覚り、行動範囲やらなにやら、被ることが殆どなくなるくらい変わります。


 私は暇つぶしにガキどもの頭の中を覗いてなにがどうなっていくのかを見ていたりもしますが、一部の人達の内面は思っていたよりずっと複雑で、個性を感じます。現実に対する感覚が違うからね。同じ色を持つ集団の中に数人だけ異色を出しているのに誰も気にしていないという不思議。


 子供社会だからとか彼女らの立ち回りがうまいからとかじゃなく、そもそも認識の外側にあるから手が出せないところもあるんでしょうけど。


 私がもっとましな人間だったのなら近づくのもやぶさかではなかったんでしょうけど、あいにくさま今度の人生でも簡単に殺人を繰り返しているのでね。その対象が目立たないだけで。


 平和に暮らしたかったけど、思いついたことは実行してしまう主義なので。


「だから私は誰かと心を通わせることなく一人でいることを選んだつもりだったんですよ」


 異国情緒漂う褐色肌の同年代の少女たちに言います。


 食事の間はみんな静かで、いや、彼女たちは基本話すことは殆どなくて、私が一人で喋っている感じなんですが、彼女たちの中でも頭の回る子はいるんですよね。私の説明を全部ではなくてもある程度は理解して、自分の知識にして、私と会話をすることに躊躇いのない子。


 クリスティアナちゃんがそうなんですよね。


「けどあなたは一人ではありませんよ。」


「そうですね、あなたたちを救ってしまいました。だから救われた分だけ私に優しくしてください。」


「ええ、もちろんです。」みんなして同意します。私は彼女たちを救ったつもりはありませんが、彼女たちが救われた気でいるのが好きならそうしてあげてもいいでしょう。生きてる間はみんな痛みを忘れて踊るのですよ。


「学校はどうですか?」クリスティアナちゃんに聞いてみます。


「勉強は難しいですけど、沙織様の言葉のほうがよっぽど難しいです。だから皆して頑張っています。」


「頭の中除いちゃいますよ? 遊んでもさぼっても別に私は何とも思いません。それがあなたたちの本性であるなら、隠したり抑圧する理由なんてありませんから。」


「滅相もございません。」


「あら、そんなかしこまらなくてもいいですよ。」そう言いながら微笑みかけると彼女たちもみんな笑顔で私を見る。


人間を支配すると言うのも悪いことではない。殺すだけだった前世と違い、今世の私は融通が利いているようで何より。


 だが私が決められることでもないことに苛立ちが湧き上がる。私だが私でない。支配できない私。命令できない私。当然ながら殺すことも出来ない。


 ……別に私が強要しているわけでもなく、彼女たちは自然と笑顔を浮かんでいます。


 この家が広くて綺麗だからとか、食べ物が美味しいからとかじゃなく、地獄から救われたら皆そうやって笑えるんですよ。一日中家の仕事をしながら男に抱かれるだけの人生では浮かぶことのできない笑顔ですね。


 私は別にフェミニストでもなんでもないですけど、自分の行動の結果簡単に人が変わることを見ると悦楽を感じずにはいられません。それがいい方向であっても悪い方向であっても。


 東南アジアの小さな町、例えば電気も繋がってない、水道もなく井戸水ですらなく泥水をすすって生きている人達の、町と言うより集落と言ったほうがしっくりくるところには未だにその集団の中にだけある決まりで裁くところがあります。


 それにはまた二つの種類がありまして、一つは女性上位社会、もう一つは男性上位社会です。女性上位の場合は、そうですね、例えば若い女は結婚する前に、夫を決めるため、未婚の若い男の全員と数日だけ生活をしてみます。


 もちろん夜のあれやこれやも行われ、互いの相性を判断します。


 こういうほのぼので見えても野蛮なところは平和です。昔から女が上位な社会はほのぼので、平和です。


 逆に男性上位の社会があります。


 こっちは暴力がはびこっていて、問題を起こす女性は無残に殺されるのが一般的です。


 集落の皆が同意の上なので、役所などに被害届が出されることもなく、例えば浮気をしていたとか婚前性行が発覚されるとかね。


 別にその女の子がだれだれを殺したとかじゃなくて、こっちも同じ野蛮ですが、現代的なモラルを持っている人間ならこっちを野蛮で残酷であると言えるでしょうね。


 そんなどうでもいい現代人の価値観の話は別にしたくないですけどね。偽善的な女性団体などでは他国で行われるこのような事件にはまるで無関心なのは知っているので。


 私は夏休みになるとそんな僻地の村までわざと足を運び調べました。小学生の時までだったんですけどね。


 女性社会か男性社会か。どっちでもない場合もありますが、それはただ中央から地域に手が届いてるだけなんですよね。


 そして男性社会である場合、潜在的な被害者となりえる女性を日本に連れてくるわけなんですね。


 もちろん彼女たちに戸籍は存在しないし、人間扱いすらされてない場合もありますがそうではなく、日本での戸籍です。


 住む場所もなく、言葉も通じませんが、そうですね。


 一つ、事例を紹介します。


 とある村に都会に行きたくて親から金を盗もうとして捕まった女の子がいました。


 その少女は村のはずれにある木に縛り付けられて、同年代の少年たちに陵辱されていました。


 運よく発見したものでね。


 私の中には転生してからでもくすぶる闇があるんですよ。


 それを発散するいい機会でもあるので、そもそも自分がどんな人間なのか、誰も知らない状況を耐えられなかったので。


 少女たちを私の家に招いたこともあるんですけどね。


 少年の一人が急に空中に吊り上げられます。


 そして徐々に四肢を引っ張るように念動力を使い、体がばらばらになる。少年たちの悲鳴が上がり、やつらは逃げようとするも、私がそれを許すわけもなく。


 もう一人の頭を爆破させて、後もう一人はあばら骨を体の中側に食い込ませ、肺と心臓がつぶれ血を吐いて死に絶える。


 残りは二人。私はやっとそこで姿を現し、素早く一人に近づいて片足で少年の足を引っ張り、後ろに倒れそうになるのを支えるようにして、そのまま首に体重をかけて頭をねじ切る。


 怪力すぎますが、これが超能力を使って強化した私の身体能力だ。


 最後の一人はちびりながら私を見ている。


 そうですね、少年はバカではなかったようで、私がすべての怪異現象を起こした元凶であることを一目でわかってしまったんだろう。


 恐怖で身がすくんでいるけど、お前たちだって狩られる時は狩られるんだよ。


 私はゆったりした足で少年に近づき、思いっきり少年のお腹を蹴り上げる。


 足のつま先が少年の内臓に食い込み、生暖かくぬるぬるとした感触が伝わってくる。


 そのままショック死した少年から足を抜いて、顔が精液まみれになっている少女に近づく。


 少女は半分はおびえ、半分は期待している目で私を見ています。


 名前を聞いてみます、頭の中に直接にね。


 テレパシーってやつです。


 超能力の定番ですからね。


 やらないと面白くないじゃん。


 それで名前を聞いてみます。


 クリスティアナという答えが戻ってきます。


 私は少女に選択肢を提示します。


 記憶を覗いてからね。


 都会に行くために私からお金をもらうか、私について異国に向かうか。


 少女の答えは、まあ、今も私と同じ食卓で食事をしているところから察することができますよね。


 そしてクリスティアナと似たような状況で私に拾われた総勢6人は、浮浪者のおっさんたちの形式上の娘になって私と一緒に暮らしています。


 おっさんたちは居酒屋の料理人から学んだ料理の実力を活かして、定食屋を二つ開いて、適当に働いているようにしました。


 体裁があるからね。そこら辺は案外ガバガバだったけど、審査がないわけではないからね。私から見てガバガバでも普通の人間からはそうでもないかもしれない。


 それと東南アジアから連れてきた彼女たちが皆うまく言ってるかと言うとそうではなく。


 二人ほど私から逃げようとして殺しました。そりゃね。選択肢あげたじゃん。選択したのはそっちだからさ。今更どこに行こうとしているのか、せめて相談くらいはしてもね?


 だから拾った女の子の数は6人でしたが、今いるのは4人だけになりますね。残ってる子達には言いました。逃げようとしたので殺したと。多分私が頭の中を定期的に覗いたり記憶やらなにやらで実験をするのが耐えられなかったんでしょうけど、世の中一方的に美味しいだけの話なんてありません。それもわからなかった彼女たちには覚悟が足りなかったんでしょうね。


 けど話し合ってもう一緒に暮らせないって、結論が出たら本国に戻るにせよ、ここで何かしらの仕事につくにせよ、やれることはやるつもりだったんですけどね。殺す前に説明したんですけど、聞く耳持たず。なら仕方ありませんよね。


 他の子達は私を女神のように敬ったり、クリスティアナちゃんみたいに様付けで呼んだり、まあ、ほぼ使用人になってますね。


 殺されたくないから私に服従してるとかじゃないことくらいは、私が彼女たちの考えを読めるのでわかります。彼女たちは私と同類までは行かなくても、私のためなら死ぬことも厭わぬ忠実な下僕…、ではなく、幼きメイドになりましたね。今時メイドって、変な話ですけどね。


 金持ちの中ではそんなメイドとか使っている人もいるっちゃいますが、ちょっと時代錯誤と言うか。


「メイドカフェとかあるよ?」などと英里ちゃんがほざいていたので行ってみたら、あれですね。メイド服着てる一般人が変なことして味の割には高値の食事を提供している感じで。


「だから、本物のメイドじゃないことを皆知ってて来ているの。雰囲気だよ、雰囲気。オタクならわかる感じ」


「にしては男性客しかおりませんが。休日の昼で、天気もいいし夏の冷房も利いて、涼しくて心地いいのに女性客は私たちしかいませんよ?」だから視線を感じちゃうんですよね。この辺の有名なお嬢様学校に通う中学生の制服を着ている二人組の女の子。


 二人とも美少女ですからね、そりゃ見る気持ちもわかりますが。綺麗な顔は咲いた花のようでついつい目が行ってしまいますからね。私は目線を動かさずに意識だけ向けちゃうんですけど。そんな前世で培った殺し屋の誰得なテクニックなんて一般人が嗜んでいるわけもなく。


「そりゃ沙織ちゃんは可愛いからね」


「あなたも十分可愛いですよ」


「えへへ、デレるね…」


「ふふ」


 そんな感じで二人してイチャコラしてましたとさ。ちなみにケチャップでオムライスの上に何か書くのはちょっと笑っちゃいました。これが21世紀の感受性なのかな、と思ってみたり。


 そうじゃなくてですね。


 ルリルちゃんって子がいるんですよ、うちには。目が大きくてまつげが太くて長い。短いポニーテールの私より一つ年上の子で、私の忠告で一人殺しましたからね。


 肌色が違うからと彼女をいじめた女の子です。監視カメラがなく、誰も見てないことを確認できたら階段から突き落とせばいいと言ったら、実行した結果いじめっ子は死にました。当たり所が悪かったんでしょうね、きっと。


 そんな誰も喜ばない殺人の話はここまでにしておきましょうか。もともとこういう話がしたかったわけではなく、私がやっと中学生になって、うちの学校の闇と言うか、変なところでちょっと苦戦している…、わけではなく。


 社交界があるんですよ、別に貴族の社交界とかじゃなく、どことなく繋がってしまう社交界です。別に意図して集まるんじゃなく、ただ近くで行われるパーティや行事に参席することがあるとそのたびにいろいろ見たり聞いたり言われたり言ったりしないといけないので。


 そのための礼儀作法と言えなくもないでしょう。


 問題は私が選んだ父親が、義父ですけど、私を連れまわすことになってしまっていることです。それのどこが問題かと言うとですね。


 私の義父、明らかに前者側の人間なんですよね。つまり、人間のくず側です。


 そんな義父に連れて行かれて私が向かう社交界と言うのは、別に社交的な集まりではなくても義父と似たような人達が義父の周りに集まると言うことでもあり。


 そして私はポット出の謎の美少女。話題にならないこともありませんよね。当然ですが。隠し子か、隠し子なら母は誰なのか。隠し子じゃないならどこから連れてきたのか、本当の親はどうなっているのか。全然似ていないから多分実の親子関係ではないはず、ならどんな関係なのかとかですね。


 別に皆噂好きで軽薄だったり、こっちをバカにするためとか弱点を掴みたいからとかじゃなく、人が集まると本当のことだけ言うわけにもいかず、言うなれば場の空気が形成されます。その空気の中で自然と一回や二回だけ口にするも、それが言伝に人から人へ広がります。


 気が付くと周知の事実となり、私が注目の的になってしまうと言うことになります。


 別にそれ自体はそこまで気にすることでもないんですよ。所詮家に戻って、仕事に戻ってしまえば皆忘れてしまう事柄なので。そんな暇な集団じゃないのでね。暇な人間も何人かいますが。親の遺産で贅沢な暮らしをしている人達とかね。


 なのになんで招待状が来るような集まりに参席しているのかは、この私からしてもちょっとだけ謎ですが。


 小学生の時は別にこんな場所に来なくてもいいので、来ないように義父に言ったらそれが通ったのに、もう家族は私だけになってしまいましたからね。案外いい父親で、娘にはとことん甘いです。どこまでも。


 私が超能力を使ってそうしたからじゃなく、彼は家族には基本的に甘い人間のようで、偽物の記憶を植え付けたことにも薄々気が付いているようですが、それでも私を手放したり何かしようとしたりはしていません。


 酷い女癖も離婚をきっかけに直して、今はひっそり一人で処理しているんですよね。顔も悪くないんですよ。声も渋くて、英里ちゃんが言うにはイケメンらしいんです。私から見てもやってることがあくどく、軽薄な行動理念だけ目を瞑ると結構いい男なんじゃないかなと。


 だから精神年齢おばさんな私は別に彼とやってもいいんですけどね。一回誘惑したら怒られました。どこで学んだだの、大人を揶揄うんじゃないだの。私もまさかそう来るとは思わず、羞恥心で顔を赤くしながらその場は逃げましたね。


 超能力があってもモラルなんてどうでもいい私のような化け物でも、こうも予想できない行動を取られるとね。


 にしては私の水着写真とか義父の部屋に普通にあるんですけど、それで発散しているわけじゃないんでしょうね。


 別にいいけど、普通にやればいいのに。避妊だけしっかりすれば、そもそもが赤の他人だし、気にすることも…、まあ、幼児性愛は犯罪とか言いますからね。


 そんな意外と中のいい親子関係をアピールしたところで、具体的にあのくずの方のお金持ちやその子供たちにどういった問題があるのか、次はそれを話すことにしましょう。

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彼岸花に神のレバーを添えて @Lopi

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