第7話 約束

そう、ミレニア様にもっともっと優しくして、お二人の仲睦まじい姿を、

皆様にアピールして下さいませ。


多分周りの皆様は、興味津々とまだこちらを注目している筈。

ちらっと眼をやれば、さすがは紳士淑女の皆様。

この茶番を凝視している方はいない様子。

だけど殆どの方は、ちらちらと興味深げに、こちらを窺っていました。


お付き合いありがとうございます。もうしばらく見ていて下さいね。

何たって、あなた達は大事な証人様ですもの。


「まあ、なんて微笑ましい姿でしょう。

ステキですわ。

それに、ご覧ください。とてもお似合いのお二人です。

お願いでございます国王陛下。

どうかミレニア男爵令嬢様にご慈悲を。

お二人の間を割くなど、そんな酷な事はなさらずに、

どうか結婚させてあげて下さいませ。

その為でしたら私、決してグレゴリー帝国のおじいさまの屋敷などには参りません。

お約束します。

もし信用できないのであれば、その事を書面にし、皆様の前で誓わせていただいても構いません。」


「本当か!?

いやしかし、ミレニア男爵令嬢を王妃に据えるなど……。」


「そ、そうだ!

ミレニア、ものすごく残念だが、男爵令嬢のお前を私の妻にはできぬのだ。

悲しいが分かってくれ。」


おおっとアンドレア様、逃がしません事よ。


「そんな…。

お二人は一緒になれないのですか?」


「そう…だな。

いくらなんでも、男爵令嬢をいきなり王家に入れるわけにはいかぬ。」


まあ、普通でしたらそうでしょう。

でも、そこを何とかしていただかなければ。


「そんな……、悲しすぎます。

それでは私が、愛し合うお二人の仲を裂いた原因の様に見られてしまいます。

あぁ、お母様、そんな事私には耐えられません。」


「なんて可愛そうなジュリエッタ。

大丈夫ですよ、お父様とお母様が絶対何とかしてあげますからね。

そうだわ。

グレゴリー帝国のお祖父様に連絡を取って見ましょう。

あなたの為だったら、たとえ戦争になろうとも迎えに来て下さいます。」


「本当に?

おじいさまは来て下さるでしょうか。」


「ええ、必ず。」


ですって、国王陛下。

どうなさいます?


「ま、待て、待ってくれ。」


「どうかなさいましたか?国王陛下。

もしや、私達がグレゴリー帝国に連絡を取る事を妨害なさるお積もりですか?

私達を牢にでもお入れになる?

でもそんな事をなさって、

その事があちらに知れたら、それこそ大変な事になりますわね。」


そう言ってお母様がにんまりと笑った。

お母様ステキ、ステキですがちょっと怖いです。

お父様も苦笑いを浮かべていますわよ。



「い~~いや、いや違うとも、

そ、そんな事はしない。

そうだ、ジュリエッタ嬢の言う通りだ。

この愛し合っている二人を裂く事などせぬ。

二人の仲を認め、婚姻を結ばせよう。」


「まあ、本当ですか?国王陛下。

良かった。

本当に良かったですわね。ミレニア男爵令嬢様。」


よしっ、言質は取った!


「本当に!

あぁ、夢のようだわ。

アンドレア様、私達一緒になれるのです。

結婚できるのですよ。」


お花畑のミレニア様。

今あなたの頭の中は、蝶が舞い、花が咲き乱れ、

祝福の鐘が鳴り響いている事でしょう。

分かりますわ。

今まさに、私も同じ状態ですもの。

でも油断は禁物。

此処はしっかりと、杭を打っておかなければ。


「でも、国王陛下、ご心配では有りませんか?

私がグレゴリーへ行かないと言っても、

本当に行かないかどうか確約が有りません。」


「それはそうだ。」


「ならば、私は此処で一筆認めさせていただきます。

私、ジュリエッタは、

グレゴリー帝国のエトワール伯爵であるおじいさまの屋敷にはいかぬと。」


「そうか、そうしてくれるか。」


「ジュリエッタ……。」


「大丈夫ですわお母様。これも国のため、惹いては国民の皆様の為ですもの。

ですが、私からも、一つお願いをしてもよろしいでしょうか。」


「そうか、そうだな。

そなたにはこちらの事情ばかり押し付けて可哀そうな事をした。

ジュリエッタ嬢の願いだ。何でも聞いてやるぞ。」


「では、アンドレア様と、ミレニア男爵令嬢様を必ず結婚させると

一筆認めていただけるでしょうか。」


それさえ手に入れば、私は枕を高くして眠ることが出来るわ。

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