第4話

 生徒のことは嫌いではないのだが、なぜだろう。このまま教師をしていて大丈夫だろうか。教師生活を長年していくうちに不安は募っていく。


 そんなことを考えながらも、私はそれでも生活のために学校へ行く。今日は新調したメガネをかけていこう。コンタクトもいいが、これを機にメガネにしてもいいだろう。目が痛くなることもないし、そうしよう。別に激しい運動をするわけでもないし。

 メガネをかけて学校に行くと、生徒に口々にメガネについて言及された。



「先生、目が悪かったんだあ。メガネ、結構似合ってるよ。」

「先生がメガネなんて意外。どうして突然メガネなの?」


 生徒たちの言及にはあいまいに答え、私は授業を進めていった。





 その日、夢を見た。旦那が出てくる夢だ。夢の中で旦那が何かを必死に指さしている。旦那の指の先にはメガネが置いてあった。そして、必死に何かを叫んでいる。


 目が覚めると、すでに朝であった。私は夢のことはすっかり忘れ、ベッドから起き上がり、新しく新調したメガネをかけた。


「○△□※※………。」


 何か声が聞こえる。私の空耳だろうか。だが、確かにどこからかなぞの言語が聞こえる。それも私の耳元からだ。旦那が死んでとうとう私の精神も病み始めたか。


 それでも仕事にはいかなくては生活していけない。仕方ない。朝の支度をするか。


「○△◇※………。」


 やはり、耳元から何か声のようなものが聞こえる。学校帰りに耳鼻科によって耳を調べてもらった方がよいのだろうか。それとも、言ったことがないがここは精神病院に行ってみてもらった方がよいか。そんなことを頭では考えながらも、身体はしっかりと学校の準備を行っている。朝食を食べ、化粧をして服を着替える。




「行ってきます。」


 私は誰もいない玄関に向かって挨拶した。これはもう習慣である。もう、見送ってくれる旦那はいないが、挨拶は習慣になっている。いつも通り、誰のいない玄関に向かって挨拶をした私は車でいつも通り学校へ向かった。

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