2.作戦決行へ。
「あ、タケルお兄ちゃん! いらっしゃいなのです!!」
「リーリア様。お元気そうでなによりです」
「えへへ! ありがと!」
リーリア様の部屋を訪問すると、無垢な笑みを浮かべた彼女が出迎えてくれた。
ツインテールに結んだ銀色の髪に、赤の瞳。将来有望であろうと思われる、幼くも、お人形のように整った顔立ち。歳は今年で十二だったか。
小柄な王女は、ぴょんぴょんと、無邪気に飛び跳ねるように部屋へ戻っていく。
「ところでリーリア様。密偵――お手伝いさんは、いまどちらに?」
「ん、ニーナさんのことです? ニーナさんなら、そこにいるですよ」
「アタシが、ニーナです」
「うおっ!? 影が薄いから気づかなかった!!」
そんな彼女に問いかけると、まるで陰から人が生まれたように。
一人の女性が姿を現した。眼鏡をかけた、なんとも地味な人だった。
彼女の名前はニーナ・フロー。国王様が言っていた密偵であり、リーリア様の護衛を務めている人物。本業は暗殺者だという話だが、今は置いておこう。
「ニーナさん、いま少しお話いいかな?」
「構いません。こちらへ」
「お、おおう……」
訊ねると、あまりに淡白な返事。
しかし了承は得られたので、ひとまずリーリア様に声が届かないところで情報交換。まずは、どうして謀反を考える大臣がいるのか、ということ。
「大臣が謀反をする理由、って?」
「はい。アタシの得た情報では、第一王女であったクレアの派閥に所属している人物とのことです」
「あぁ、なるほどね。それで自分の立場が危うくなったから、か」
「その通りです」
俺はそこで、少し頭をひねる。
そうなってくると、必然的に犯人は絞り込める。
「えっと、伯爵家出身のゴルゴナとか? クレアの言うことには何でも従っていたし、定期的に俺に対して罵詈雑言を浴びせに来たし」
「その可能性は、考えられますね」
「ふむふむ……」
しらみ潰しに、となると時間が惜しい。
ゴルゴナを第一候補にして、しかしそれ以外に決定的な情報がほしかった。そうなってくると、やはり俺の夢想魔法の出番だろう。
「よし、それじゃ。今夜だな!」
「今夜……?」
少しばかり危険も伴うけど、それは見かけだけ。
俺の夢想魔法は、結果まで思いのまま。だからちょっとした冒険も、安心安全。
「念のため、ニーナはリーリア様についていてやってくれ」
「はぁ……。分かりました」
俺は無表情に首を傾げる彼女にそう言って、一度外へと出た。
そして、大きく一つ頷いてから魔法を発動する。
「今夜は、少しばかり忙しくなるぞ……!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます