第1章
1.国王からの依頼。
「それでは、タケルよ。今までの無礼を改めて謝罪しよう」
「いや、良いですよ国王様。国王様も騙されていたわけだし」
謁見の間で。
俺は国王と一対一で話をしていた。
その他の家臣たちには下がらせ、どうやら個人的なことらしい。
「ふむ……。では、さっそく本題に入るとしよう」
「はいはい。よろしくお願いします」
俺の態度に関しては黙認。
というか、ツッコミを入れる余裕もない、といった感じだった。
「――実は、な。大臣の中に、謀反を考えている者がいるらしいのだ」
「謀反、ですか?」
「うむ」
しかし、出てきた話は思った以上に深刻なもの。
俺は少しばかり、国王様の話に集中を持っていく。眉間のしわを深くして、国王様は頷いた。そして、大きくため息をついてから、語り始める。
「これは密偵からの情報でな。何者かが、私の命を狙っているらしい」
「で、それを俺に解決してほしい、と?」
「虫のいい話だとは、思うがな」
俺の言葉に、自嘲気味な笑みを浮かべる国王様。
そんな彼の様子を見て、こちらはあっけらかんとした風に答えた。
「いいっすよ。もともと、俺はこの国のためになれれば、それでいいんです」
「タケルよ。お前は本当に、心優しき青年だな……」
「いえいえ。それほどでも」
心の底から感心したように、国王様は息をつく。
俺は過大評価されているなと、そう思いながら頬を掻くのだった。
「それじゃ、その密偵さんと会わせてもらえますか? 俺の魔法の効果を高めるには、いくつか情報を共有する必要がありそうなので」
「うむ、分かった。いま密偵は、リーリアのもとにいる」
「リーリア様の?」
そんなわけで、交渉成立。
次に訪ねると国王様は、少し意外なことを言った。
「あぁ、そうだ。私だけではなく、リーリアの身にも危険があるようだからな」
「なるほど。護衛ってことですね?」
「そういうことだ」
俺はそれに納得する。
たしかに、第一王女になったリーリア様にも、何かしらの危険があるのは確かだった。彼女はまだ幼いため、警備は厳重にするべきだろう。
頷いて一礼し、俺は踵を返した。
だがそこで、国王様は最後にこう言う。
「タケルよ。感謝するぞ」――と。
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