2.イケメン勇者、ざまぁ。







「そんなわけで俺の魔法で、お前たちの考えてることは全部、国民に筒抜けになってたのさ。この数日間ね!」

「バカな! そのような、強大な魔法がお前に使えるわけが……!」

「んー、それは俺も分からないんだけどね? とりま、お前らを拘束するよ」

「はっ……! 一人で、このマイケル様に勝てるとでも?」


 マイケルは丸腰な俺を見て、そう笑った。

 たしかに、俺は私服のまま王城を訪れている。

 だが、それには理由があって……。


「あぁ、心配ない。俺だけじゃないよ?」

「…………は?」

「みなさーん? どうぞ、ご入場くださーい!」


 間抜けた顔になったマイケルをよそに、俺は後方に声をかける。

 すると入ってきたのは――。


「てめぇ! 俺達をコケにしやがって!!」

「許さねぇぞ! ふざけんな!!」

「バカにするのも大概にしろ!!」


 ――生き残った勇者と、怒れる国民たち。

 わらわらと押し寄せる人の波に、青ざめていくマイケル。ついでに王女。


「国民のこと、下民だって。内心では思ってたみたいだね?」

「そ、そのようなことはない!!」

「もう誰も信じないよ?」

「………………」


 俺が言うと、マイケルは絶望に満ちた表情を浮かべる。

 そして王女の方を見て、こう叫んだ。



「ぜ、全部この女のせいなんだ!!」――と。



 泣き崩れながら。


「この女が、自分と手を組めば王になれる、って!!」

「マ、マイケル様!? わたくし、そんな――」

「頼む、信じてくれ!!」

「ひどいですわ!?」


 そう、訴えかけてきた。

 おそらくは、今までずっとこうやって場を切り抜けてきたのだろう。なるほど、そう考えたらマイケルはなかなかの演技派だった。

 しかし、致命的にバカだった。



「マイケル、さ。さっきの話、忘れたの?」



 そうだったのだ。

 マイケルたちの思考は、すべて国民に筒抜け。つまり――。


「あ……!」


 いま、王女を捨てて逃げようとした。

 そのことが、全員に伝わってしまった、ということ。

 そうなってくると、国民の嫌悪感や侮蔑はすべて、マイケルに向くわけで。



「この…………ド腐れ勇者がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「ぎゃああああああああああああああああああああああああ!?」



 はい、このように。

 見事に袋叩きですご苦労様でした。


「ふぅ! スッキリした!」


 俺は額の汗を拭って、気持ちのいい笑顔を浮かべた。

 いやー、勧善懲悪、っていいね!



「あの、タケル……?」

「ん、どうしたの。王女様」

「わ、わたくしと手を組みません?」



 うわー……。

 やべぇのが、もう一人いたよ。


「それはないわー」


 だから、一言こう答えて。



「とりあえず、王女様。貴女はこれから平民になりますので」

「え、どういうことですの?」

「国王に、全部チクってますので」

「………………」

「大丈夫ですよ。第二王女のリーリア様がいますから!」



 俺は、満面の笑みでこう言うのだった。



「貴女は気兼ねなく、貧困層へゴー! です!」




 

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