第17話 アップルパイ

美味しいアップルパイが食べたくて、パン屋を巡ったのだけれど売り切れだったり、置いてなかったり、お休みだったりして手に入らなかった今日。


仕事で忙しい母がつかの間の休憩時間に買ってきたのは、スーパーで良く売っている正直、美味しいとは言い難い一個88円のアップルパイだった。


これじゃない。私が食べたかったのは、欲しかったのはこれじゃない。

大体それなら自分で買ってこれたのだ。


でも。


最近、めっきり老いた、と感じることが多くなってきた母が一生懸命仕事の合間にか買ってきたアップルパイを「要らない」ものとして扱うことは出来なかった。


母の気持ちが、母の貴重な休み時間を費やした事実が、そして、私が喜ぶだろうと想像して買ってくれたことが


嬉しい。切ない。私に、私みたいな、駄目な娘なんかに。


何も 与えられない娘でごめんなさい。


才能もない。仕事もほとんど出来ない。結婚も、結局子を成すことも出来そうにない。


出来損ないの娘でごめんなさい。


そんな私に優しくしてくれて、ありがとう。


……ごめんなさい。ごめんなさい。ああ、やっぱりだめだ。私はやっぱり。

だめなんだ。


だめなんだ。もう。

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