閑話③「キューテッド☆モンスター・エリー」



「〜〜♪」


第3区画、危険地区。

スラムと呼ばれる場所にある小さな小屋が、彼女の店であり、家だった。

生まれた時には親は死んでいた。それはもしかしたら幸運だったのかもしれない。

鼻歌まじりに手を動かすエリー。


「……うんっ、こんなもんかなっ」


手を止め出来具合を確認する。問題なさそうだ。

手に持つ装備は奏介とエルカに依頼されたアーマーだ。魔力を使用してはいないが、それを差し引いても良い出来だろう。


「これなら満足してくれるんじゃないかなっ」


机にアーマーを置き、もう一度観察する。

……何か物足りない。


「……なんか、作り足りないというか、手寂しいとでもいうのかな〜、うーん…」


つまるところ、物足りないのだろう。

エリーは物作りが好きだ。好きになったのは

10年も前だろうか。


エリーは部屋の道具を見回し、何をするべきか考える。そして、毎度の如く目に留まったのがーーー


「…良いものみーつけたっ!」


ーーーー絵筆と塗料だった。


五分経つごろに、準備が終わり。


30分もすると、鎧の半分は鮮やかに彩られ。


1時間も経過する頃には、鎧の表面はすっかり埋まってしまった。


うんうん1人で何度も頷くエリー。


「これで完成っと!」


そういい、鎧を運ぼうとした時、気付く。


「はっ…!裏面、まっさらだ…!」


これはまずい。表を塗りたくって裏はノータッチなど、手抜きを疑われてしまうのではないか。

それはエリーのなけなしのプライドが許さなかった。


(でも、何描こっかな……)


今度は悩みだす。所詮裏面は見えないもの。何を描いても問題は無さそうなものだが。


「……よっし!きーめたっ!」


そしてまた絵筆を握り、熱心に鎧に描き込むエリー。鎧を乾かす時間なんて頭に入ってはいない。

(これで喜んでくれるよねっ!)


……そしてその後、表のほとんどを塗りつぶす羽目になるなど、今の彼女は思ってもいなかったのだが。

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