閑話② 「ネコちゃんと遊びたいんです」



いつも通りの、エンデの日常。

彼女はてくてくと街を歩く。

水面下では思惑が交錯しているこの街も、上辺を掬えばいい街だ。

いつも通り、パンを行きに買い、食べながら移動する。

鳩にエサをやり、近所のおばあさんに怒られ、涙目で走って逃げる。

悪気があってしたわけではない。優しい娘だった。


目は赤、髪は銀髪。


彼女は動物が好きだった。


路地裏のネコに目を止める。


「かわいい…」


ふらふらーと、ネコの前でしゃがむ。

(今日はネコちゃん逃げなかった!)


心の中でガッツポーズ。


そして、次は…

(撫でても…だいじょうぶ、だよね?)


恐る恐る、手を伸ばす。


「ニャー」


ビクッ!と手を戻す。

(何にびびってるんだろ、わたし…)


自分の行動を客観的に捉え、一人で恥ずかしさに悶える。まだだ、今日はいける気がする。


「に、にゃー…」


周りに人がいないのを確認してから、ネコの鳴き真似。こんなの誰かに見られたら…


「あ……」

「……?」



見られた。


「へ、えっ、えっと…その、あの…」


途端におどおどしだす。目の前の女の子はわたしより歳下っぽいのに、なんて痴態…!


と、その女の子はネコに近寄り、手を出す。

するとネコは、ぺろぺろとその手を舐めだしたではないか。


なんだろう、すごい負けた気がする。


「〜〜〜!!」


めちゃくちゃ悔しい。というかもう恥ずかしくて今すぐ逃げ出したい。でもなんか何も言わずに去るのは負けたようで悔しい…!


そして、彼女の口から出たのはーーーーー


「…まっ、負けたわけじゃ、ないからねっ!」


そして、彼女はそのまま走り去っていった…



「……なに、今の…?」



そして、言われた本人である、エルカは。


手に乗せたツナをネコに食べさせてあげながら、何を言われたのか悩むのだった。

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