第11話 祝福か、呪いか
少しの浮遊感とともに、一瞬失われた体の感覚が戻ってくる。
「あ!おかえりなさいっ、待ってました!」
にこやかに話しかけてくる、この娘は…
「えへへ、ねっ?私のこと、みーんな忘れちゃったでしょ?」
そう、女神様だ。
金髪を揺らし、嬉しそうに微笑んでいる姿を見ると、とてもそうは思えないが、身につけたものや、そのオーラから、直感的に神だとわかる。分かってしまう。
「えっと、帰る際はここを通らないといけないんですか?」
「へ?……もしかして、イヤ、だった…?」
「い、いや、そんなことないです!」
肩を落とし、上目遣いでそう言われたら、イヤだなんて絶対言えない。
「ほんと?なら良かった!でも、ここは通らないとダメだよ?ここは、世界を結びつける場所だから、ここを通らなきゃ、あっちへは行けないの。」
なるほど、そんなルールがあるのか…まあ確かに、中継地点的な役割があっても普通…なのかもしれない。
「じゃあ、さっそくスランタルに戻ってもらうんだけど…奏介くん、君、迷ってない?」
「え?何にですか?」
急にこんなことを言われても、思い当たる節がない。
ので、こんなふうに返すしかないだろう。
「うーん…別にいいんだけどね?いきなり、国を落とせー!って言われたら、ふつうって嫌がったりするものじゃないのかな、って。」
「あー…」
完全にオタク文化が勝利しましたとしか言えない。
チート主人公で異世界転生にーとか口が裂けても言えない。
「でも、やる気ならいいんだよ。その調子でがんばってね!ーーーーそれじゃ、送るよっ」
そう聞こえたのを最後に、オレはまた、舞い戻る。
ーーーーー今は誰も知らない、知ることのできない、約束された聖戦の地へとーーーーー
「で?アイツはどんくらい持ちそうなわけ?」
ーーーーー突然現れたのは、肌が黒く焼けた美女。
「むっ。奏介くん達を消耗品か何かみたいに言わないでって、いつも言ってるじゃない!
……奏介くんは、生き残るよ、きっと」
女神はそう言い返す。
「へぇ?何がアンタにそこまで言わせるんだい?」
「……聖剣が、彼の手に」
「!?アポカリプスを手に入れたって、それはほんとかい!?」
「うん。もし、奏介くんが聖剣を使いこなしたら、間違いなく、スランタルを支配する。それを見届けるのが、私の役目」
「……分かってんのかい?そんな"コマ"、欲しがるのは何もヒトだけじゃない。アンタ、神のくせに死にたいのかい?」
「ふふっ、まさか。大丈夫、彼はまだ何も為してない。彼の仲間はとっても強くていい子。あの子たちなら、すぐに国を落とせる。間に合う…はず」
「楽観的だねぇ、アンタは。…ま、いいんじゃないかい。アタシ達が始めた事にせよ、アイツらは自分の意思で参加したんだ。それがどうなろうと知った事じゃないが、アンタがそれをどうしようと、知った事じゃないよ」
「うん。……がんばるっ」
止まった時間が動き出す。時の歯車は永久には止まらない。どんな幸せも、残酷な運命さえも、時は歯牙にすらかけず続いていく。それは幸せなのか、残酷なのか。
それは神ですら、分からない。
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