閑話① 「定期討伐」
「……こんなものでしょう」
真紅の甲冑の男がそう吐き捨てた。
色とりどりの甲冑を身に纏った騎士達は、折り重なる屍の中心に立っていた。
「ねぇねぇー、結局ボク、何もしてなくない?これでお金貰っちゃうと悪い気がするなー?」
先ほどとは対照的な、蒼い甲冑を着た騎士が不満を垂れる。
「ワガママを言うな、これはキサマの専門外だ。適材適所というものがあるだろう」
「そうは言ってもさ〜、このまんまじゃ給料ドロボーって言われちゃない?言われちゃうよね?ね?」
そこへツカツカと歩み寄るのは、漆黒の騎士。
「くだらん話をするな、お前たち。皇帝陛下への報告は、皆一様に働いたと口添えしておこう。それで文句は無いな?」
「はぁーい」と、呑気な返事を返す蒼の騎士。
「これより、凱旋だ!気を抜くなよ、帰るまでが逆賊討伐である!」
そう、高らかに叫んだところにーーーーー
「ま…て……!…それ…をっ、置いて…けぇ…!」
「ん?」
背後から聞こえるのは、重傷を負い、倒れた逆賊の男。
「それ…をっ、返せ……っ!」
「ふむ。ーーーーー良かったな、手柄ができたぞ」
「ホントだねっ、待ってました〜!」
漆黒の騎士は、振り返る事なくそう告げる。
彼の手には、地図。だが、ただの地図ではない。図上には、蠢く赤点が所狭しと存在する。
「この地点は既に片付いたと言って良いだろう。全く……ん…?」
そういい、地図の一端に目を向ける。
「……おい、第3区の担当は?」
「私です、ウォーフェスト様。何か問題が?」
白銀の鎧の騎士が、彼の横に駆けつける。
「……問題というほどではないが。あの地区の総数は、147名だったよな?」
「ええ、その通りですが…脱区者が?」
そういう彼を横目に、告げる。
「……いいや、逆だ。"1人増えた"。
調査を頼めるか、トランサス」
「ええ、勿論です。昼過ぎに危険地区警邏ですので、私が同行し、直々に確認を行って参ります」
白銀の騎士・トランサスはそう言い、準備をするため、別方向へ立ち去った。
その先の運命など、微塵も知らずに。
「さて、そろそろ行くぞ」
「えー、まだ終わってないよ〜?ね?」
「バカ、ソイツはとっくに死んでるだろうが。いいから行くぞ!」
「ちぇっ、遊び足りなーい」
蒼・真紅の騎士たちが、漆黒の騎士の命により立ち去っていく。
後に残ったのは、住民たちの歓声と、身体中から黒い液体を溢す、男の死体だけだった。
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