第9話 魔法のない人々

「まあ、作るのは簡単ですよ。

 すぐできるので、まあ、半日ほど待っててくださいよっ!」


「半日でできるの?素材とかは取ってきたほうが良かったりする?」


ゲームなどでは定番、素材持ち込み。

これによりより良い武器防具が生み出される、というのは、ゲーム内ではお馴染みである。


「取ってきても良いけど、扱えないんだな〜、これが!」


と、にこにこと話すエリー。


「私たちには、奔流が全く感じ取れないんですから、まあ当然…およよ、あんまし分かっておられないっ!仕方ないから説明しちゃいますね。こほん。

害獣などの獣には、大抵結晶石が付いてますよね?

てことは、あれらにも魔法は使えるんですね、理屈の上では。まあほんとに使っちゃうのもいますが。

そして、私達は、本流を感じ取れない。扱えない。

素材に張り巡らされたそれらは、確かに、

硬かったり、何かを跳ね返したり、力があります。

逆に、それらを無効化したり、流れを読んで加工しないと、奔流をぶち壊しちゃったり、そもそも

切れなかったりするんです!

…おにーさん、どうして、私たちがこんなにお安くモノを作るのか、考えました?

魔法が使えない、それって、戦えないとか、飛べないだけじゃなくって、もっとたくさんの不便が強いられるんですよ?」


「えっと、その言い方だと、まるで…」


「ええ、まあ。おにーさんはこの世界の方じゃないんだろうなー、みたいなのは分かってましたよ?」


「ええっ!?それって、オッケーなのかな?」


「まあ、大丈夫でしょ!大っぴらにいうのはともかく、ですけどね。」


なぜか安心感をくれるエリー。しかし、だとするとなおさら…


「えっと、前にも来た人が…?」


「……まあ、そうですね。お名前が似た感じの並び、というか、カタコト、というか…なんとなく?」


女神様は第一使徒、と言っていたが、前例があるのだろうか?


「その人、今は?」


「さあ?私はしりませんっ!というか、そんなこと話してたら、いつまで経っても作れませんよ?

さあ散った散った!テキトーに遊んでなさいっ!」


そう言い強引に追い出されてしまった後、ここまで

ずっと無言だったエルカが口を開いた。


「とりあえず、目的、終わった。」


「ああ…半日待ったらできるってことだし、明日の朝にでも向かえば良いよね。じゃあ、この後は…」


「元の世界に、一度戻ると良い。でも、」


「も?」


そこでがしっと腕を掴まれ、近づいて一言。


「ごはん、食べてから。」


…その後近くのお店で軽く済ませ、奏介はやっと、

元の世界へ一度帰還することとなる。

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