第17話 ささやかな叛逆


日本へ戻るのはたった1日ぶりだが、その1日がかなりハードだった分、久しぶりに感じてしまう。


今日、奏音たちと会う予定はない。

神との謁見のみに用がある。なので、オレは早々とスランタルへ戻ろうとしたのだがーーーーー


「あっれ、おにいちゃん!?なにしてるの!?」


……なぜいつもこういうタイミングで…!!

というか、この慌てぶりは一体?


「もう学校行ったんじゃなかったの!?もう8時だけど間に合うの!?」


オレ、奏介は電車で三十分かけて登校している。

間に合うわけがない。


「あー、いや…ちょっと今日は頭が痛くて…」

「昨日、お風呂に長く入ったからじゃない?

もー、ちょっと待ってて、体温計取ってくるから!」


「いやまって、お願いだからまって!早まらないでぇ!」

「何がなの!?てかすごく元気じゃん!?」

「こ、これには深いわけがあってだな…!」

「じゃ、言ってみなよ!怒らないから言いなさいっ!」

「こ、このことを話したら天罰が…」

「天罰なんてあってたまるか!というか、天罰落ちちゃえばいいよ!」


そんなこんなで問答し、なんとか落ち着いてもらえた。


「……ふむ。つまりお兄ちゃんは、今日、どぉーしても、学校を、休んでまで、しなきゃいけない用事が、

あるといいたいのかな…?」


「は…はい……」


明らかにご立腹だ。これはなんとかしないと、ホントに命に関わりそうだ…


「別にね?おにいちゃんの用事を詮索したりなんて、する気ないよ?でも、学校を休みたいなら、理由はきっちりさせておくべきじゃないかなって、ね?」

「おっしゃる通りでございます…」


ウチはシングルマザーで、母さんはいつも早くに家を出ていってしまうため、家事などは兄妹でしている。

家事だけではなく、お互いの学校生活の手助けも、と言えばいいだろうか。

学校を休む際は、家族の誰か、当人以外が電話に出る必要があるのだ。

そして、その役割はつまり…

「おにいちゃんは、私に迷惑をかけてるんだよ?もう8時10分、奏音も家を出なきゃいけない時間なの。

その時間を削ってまで、お説教してるの。わかってる?」

「うぐ、ごめん…」


そこで奏音ははあーっ、と息を吐き、

「ま、ずる休みなんてしたことないもんね、おにいちゃんは。何か理由があるんだろうし、それはいいんだけど」

と、仰せになられた。

「あ、ありがと…」

「でも、まだ何か隠してるね?」

う、をいう前に言われた。

この妹、できる……っ!!


「そ、それは…この前も言ったけど…」

「うん、離せない事情なんだよね。それは分かるんだけどさ……だからって、嘘をついてもバレるんだよ?ーーーーーなんせ妹ですから」


妹の圧倒的自信は決して過剰なモノではない。

事実、妹の勘の良さは折り紙付きだ。互いにババ抜きをしても、奏音は絶対にババを引かない。まるで、見ているかのように。


「仕方ないから、今日は見逃してあげるけど。

これっきりにしてよね?」


「ああ、分かってる。ほんとに、ごめん」


「ずる休みなんてしたことないもんね。

まあ、いいんじゃない?よく分かんないけど」


お言葉に甘えさせて頂こう。

ーーーーーこちらにも、しなければならないことがあるのだから。


「それじゃ、私は学校に行くけど。お昼ご飯はなんか適当に作ってね〜」


やば、もうこんな時間、などと呟きながら、奏音は家を出ていった。


(後は、スランタルに戻るだけだ……!)


ただ神に質問するだけ。

答えてくれなければ、どうすればいいのだろう。

神器では立ち向かえないのなら、勝ち目はないが…

行く前からマイナス思考に囚われても未来はない。


(能力の全てを……教えてもらうぞ)



そして、オレは、神の御前へと、移動した。

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