第3話 金がねえ!


エルカ先生による授業が早速始まった。



「いい?今いるのは、ここ…区画5、居住区」


そういいエルカが指差す場所は、五角形のうち、

右の真ん中と言えばいいだろうか、地図で言えば中央の三角の城、その斜め右下である。

スランタルは城を中心とし、周りを5つに区切っている。城正面、五角形を平面で描いた際手前にくる面の部分を区画1と呼び、そこから時計回りに2、3、と続く。


「怪しまれたらダメ。だから、魔法研究特区、区画2には近づいたらダメ…騎士、多い、から。

これから、大体の地形、出歩いて頭に入れてもらう。

その時、装備調達と、ギルド申請、して」


ここで聞き慣れてはいる言葉に驚いた。


「ギルド!?ギルドがあるの!?」


急に顔を近づけたボクから頭を離しつつ、


「ある…ソースケ、顔近い。あるけど、この国、他の国にある、戦士のギルド、ない。戦士、いらないから。だから、魔法ギルドと、商人ギルド、だけ」


「え?でもボク、魔法使えないんだけど…」


「だから、教える。」


「おおっ!」


いよいよ自分にも魔法が…!と、感嘆に震えている間にも話は進む。


「区画3、工業区、行く。そこで、ソースケに…装備を買う。」


「えっ?でもお金は……」


「神様から、貰ってるでしょ…」


呆れ顔で見てくる。たしかに、くれるって言ってたな、と、確認してみると…


「えーっと…ボク、ここの通貨よく分からないんだけど、これっていくらくらいなのかな?」


エルカに、腰についていた袋の中身を見せると……


「……けち神様…それじゃ、今いる宿の、お代も払えない…」


「ええええっ!?……てことは……」

「…計画、変更。お金、稼ぐ…」

「当てはあるの?」


エルカはしばらく考えたのち、


「…害獣、倒して、素材、売ればいい。

聖剣、あるし、筋力も、高めになってるハズ…」


害獣というのは、モンスターのようなものだろう。だが、勝てるのか……?


「えっ、全然強くなった実感ないけどな……」


ボクは自分の手や腕を見る。しかし、別段変化は……


「ソースケ、ソースケ」

「ん、なに?…ってうわっ!」


エルカがすごい勢いでホウキを振ってきた!

そして、無意識に。


ばしっ、と。


ホウキを掴み、さらに。


ボキッ、と。


握りつぶしてのけたのだ。


「へっ?」


「実感が、なくても。変化は、ある。

あなたは、この世界において、強い」


…理解はできないけど、自信が湧いてきたので良しとした。



宿から出て街を見渡すと、やっぱりファンタジーだった。木よりレンガの建物が多い。

それに、魔法大国というだけある。

郵便物、家、階段、多くのものが浮いていたりする。


「すごいな…こんなの、ボクの世界じゃ考えられないや」

「ソースケ、「ボク」って言うの、やめたほうが、いい…」

「え、突然なんで?」


急にそんなことを言われても、こっちは17年この一人称だ。今更変えろと言われても正直困る。


「弱そう、だから。剣が強そうでも、本人が、弱そうなら…襲われる。向かうのは、安全なところだけじゃ、ない、から…」


「そう言うなら、わかったけど。オレ、でいい?」


「ん、及第点…」


そのまま通りを進み、開けたところに出ると、そこには…


「ウソだろ……あれ、どうやって入るの?」

「飛べないやつ、入る資格、ない、から…」



遠く彼方、国の中心。名を「エンデ城」。


その城は、その大陸部ごと、"浮いていた"。


「いつから攻略対象がラピュタになったんだよ…

上げれるものに制限ってないの?」

「ある。でも、個人差、ある。王は、3階建ての建物くらい、なら。あれは、結晶石…」


「結晶石?」


ここで、知らない名前が出てくる。異世界特有のアイテムなのだろう、当然興味を惹かれる。


「結晶石は、主に、四種類。

1つは、魔力を高める。紅結晶。

1つは、魔力を吸い取る。紫結晶。

1つは、魔法を固定する。黄結晶。

1つは、魔法を刻み、使えるようにする。白結晶。

この場合、黄…」


エルカはそう説明してくれた。4種類か。そこまで多くはないんだな。


「黄結晶っていうのは、ずっと浮かし続けられるの?」

「まさか…いずれ、壊れる。だから、定期的に変える…」


そこで、もう一つ疑問ができた。


「結晶石は、簡単に取れるの?ていうか、どこで取れるのさ?」


エルカは全く変わらないペースで歩きながら答える。


「地下に、眠ってる…ほとんどは。あと、害獣が食べて、身体に、発現する…」


害獣は石も食べるのか。まあモンスターみたいなのなんだろうし、スライム的なのでもいるのだろう。

 にしても体に発現って。絶対グロい見た目のやついるよ……


「もしかして、これから取りに行くのって……」


「ご明察…」


……どうやら、異世界に来て初任務は、石拾いのようだった。まさか、害獣とかいうやつの体をほじくるとかじゃないよな……?


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