「月の夢」
夢を見る。そこは
滑るようにして歩いていく。右足を出して、左足を出す。そうすれば歩けることを知っていたが歩幅と進んだ距離の計算が合わない。だから滑っているようだと表現した。歩くことに理由はない。仮にあったとして今は思い出すことが出来ない。夢とはそういうものだ、いつもその時になって、それらしい理由を思いつく。必要になればそれに応じて世界が変化する。
沢山の時間が流れた。それでも月はまだ動かない。一度立ち止まることに決めた。理由がないなら歩く必要がないことを思い出す。ふと顎を上げて空を観察したくなった。天体は月以外には見つからない。きっと月が明るすぎるためだろう。
目を地上に戻すとそこには古くて小さな箱型のレコード装置が置かれていた。レコード装置には黒い円盤が載っている。装置は針に触れると勝手に動き始めた。円盤が回り始める。
装置は歌い始めた。
「
歩く理由ができた。大したことではないかもしれないが。
装置を持ち上げて、月の方角を目指して歩き始めた。装置はまだ歌い続けている。地面はもう必要ではなかった。もし、呼吸の仕方を思い出すことが出来たなら。歩きながら、この歌を一緒に歌おうと考えた。
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