(遺失物管理所)

 遺失物管理所に着いたときには日が暮れ、夜の帳が落ち始めていた。建物はこじんまりとしたもので、中の明かりが外に漏れている。入ろうとすると声が聞こえてきた。

「ここには届いていない。他を探しなさい」

「そうですか、大事なものなんです」

 リティアは建物内に入った。そこには係りの男と同じ年頃の少女がいた。

 彼女はリティアと同じくらいの年で、同じくらいの背の高さだった。眼は青い澄んだ眼で、髪は長いブロンドをしていた。

「落し物を届けにきたのですが」

 中にいた二人は同時にリティアを見つめた。

「あの、これなんですが」

 リティアは持っていたペンダントを差し出した。それを見ると遺失物管理所にいた少女は驚いた顔をした。

「それは……あたしの」

 彼女はリティアからペンダントを受け取った。

「どこで拾ったの?」

「広場の噴水の前」リティアは答えた。

「ありがとう。なくしてはけない大事なものなのに。そこで落としてしまったのね。ほんとうにどうもありがとう」

「いえ……」

「わたしは、ベロニカ。あなたにぜひお礼がしたいわ。わたしの家に来てくれる?」

「そんな、お礼だなんて」

「いいの、大事なものを拾ってくれたのだから」

 リティアは従うことにし、二人は遺失物管理所を出た。外は真っ暗になっていた。

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