(宿屋グルンデ)

 宿屋グルンデ


 リティアは静かに扉を開けた。扉を開けると軋んだ音がした。鍵はかかっていなかった。入ったところは明かりがなく真っ暗で、だが誰か人のいる気配がした。

「ようこそ」

 小さく声がした。そのほうを向くとカウンターの向こう側に老婆がいた。

 リティアはそのほうに歩み寄った。そしてテーブルの上にお金を置いた。老婆は無言でおつりと同時に鍵を渡してくれた。老婆は二階のほうを指差した。

「ありがとう」

 リティアは階段を上った。古い階段はやはりきしんだ音を立てた。二階に上がると明かりの漏れている部屋があり、廊下の両隣に部屋がいくつかあった。

 リティアの部屋は204番だった。そこは廊下の一番奥だった。リティアは鍵を開け部屋に入った。ベッドと窓があるだけの簡素な部屋だったが不思議と落ち着くことができた。悪くはなさそうだった。

 窓を開けてみたが、ここからは街の建物があるばかりで特に何かがあるわけではなかった。夜のひんやりとした空気が入ってきて、しばらく風に当たった。そして窓を閉めベッドに休むとすぐに眠った。

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