(光の街)

光の街


 街は明かりを周囲の夜に向けて放っていた。赤、青、黄、緑、それは空から見ると宝石を散りばめたようで、なんて綺麗なんだろうとリティアはうっとりと思った。

 光る玉は下降を始め、やはりこの街に向かうようだった。

 光の行くほうにリティアもついて行く。下に向かうとだんだんと街の形がはっきりし、建物の屋根の形状がわかり、家や教会の塔が見えた。

 リティアは期待を膨らませた。知らない街へと着いたのだった。

 だがいつの間にか光を見失ってしまい、街の光に紛れたようにどこかに行ってしまっていた。

 リティアはそのままゆっくりと下降していき、地面へと足をついた。リティアは街に降り立った。降りたところは街の広場だった。リティアは広場の中心に立っていた。

 リティアはあたりを見回した。誰もいず、そこにはリティア一人だけだった。

「あの光はどこへいってしまったのかしら?」

 やはり光は消えていた。しばらくあたりを探してみたが、見つからない。

 誰もいない場所。

 そうしてから、リティアは自分が裸足であることを思い出した。

「このままでは困るわ。靴を履かなくては」

 リティアは歩き出した。地面を冷たく感じ、石畳のごつごつとした感触が伝わった。

 歩いていくと店の通りに出た。ここには明かりが連なり多くの露天の店があった。このような夜にもかかわらずまだしも営業しているのだった。アクセサリーや雑貨など様々なものを売っているようだった。リティアは珍しそうにあたりを見回しながら歩いた。

 目を留めると靴を売る店が見つかった。店の前には靴が揃えて並べられてあった。リティアは立ち止まった。露店には男の人がいて、リティアを見ると目を上げた。

「いらっしゃい」

「靴を売っている?」

「売っているよ」

「どれがいい?」

「どれでも選んでいいよ」

 いろいろな靴がありどれがいいかと迷ってしまった。リティアはそのなかで一つ、赤く光る靴を見つけた。リティアはその靴を指差した。

「それは?」

「これかい?」

 店の人は靴を取って渡してくれた。とても綺麗で、リティアはそれを王女の靴のように思った。

「履いてみていい?」

「ああいいよ」

 靴を履くと、それはリティアにぴったりと合った。まるで最初からリティアに合わせて作られたように思えた。

「これにする」

「ありがとう」

 だがリティアは自分がお金を持っていないことに気付いた。

「お金、お金?」

 どうしようと思って服のあちこちを探った。

 すると何か硬く当たるものがあった。ポケットの中を探り取り出してみると金貨が一枚入っていた。

「これを使える?」

 手に持った金貨は金色に光り、少し重々しく感じた。リティアはそれを店の人に差し出した。

 店の人は金貨を手に取って見ると「ああ使えるよ」と言った。それからおつりの銀貨を数枚を渡してくれた。

「どうもありがとう」

 リティアは店を離れた。歩調は軽快になり、靴のたてる足音が夜の街に響いた。

 どこに行くあてはなくても、とりあえず靴は買った。だがリティアは少し疲れていることに気付いた。どこかに休む場所はないだろうか。

 露店の通りは終わり、暗い往来へとやって来ていた。もう夜も遅い。リティアは家々の側にそって歩き続けた。

 ある扉の前で足を止める。

 店の看板が出ていた。

〈宿屋グルンデ〉

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