(海の上)

海の上


 海はリティアの真下にあった。暗く何も見えなかったが、下方では蠢く波の動きが感じられた。リティアは前方を見た。

「どこへ行くの?」

 リティアは光に向かって問いかけた。光は何も語らなかったが、飛び立ち、前へと進んでいく。

 さほど速い速度ではなく、ゆっくりと漂いながらどこかへと向かっていた。リティアはあとに付いていく。うっすらとした水平線の他はほとんど何も見えなかったが、光が行く手を導くように照らし、道を示していてくれていた。

 しだいにリティアは自在に飛ぶことができるようになっていた。飛ぶことに慣れて、まるで背中に翼が生えているように。今ではそれが当たり前にできることのように思い、頭上の星たちの存在も、前よりももっと近くにあるように感じられた。

 速度は増し、服が風に舞って風にはためいた。

 どこかで船の汽笛がなった。見ると下方の海に大きな船があり、光とリティアはその上空を通過した。下のほうからわたしたちの姿は見えるのかしら?

 前方がほのかに明るくなっていた。海の向こうに現れたそれは、地上の街の光だった。光る玉はその場所へと向かった。そこが目的地のようだった。

 陸地に近づくとそこは、大きな街とわかるほどのきらめきを放っていた。リティアと光はその場所へと一直線に向かっていった。そうして光の街へと着いていた。

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