第4話 〜時は流れて〜 月サイド
月には悩みがありました。
どれだけ兎に想われても、どれだけ兎を想っても兎を照らす事の出来ない夜がありました。
新月です。
満月の夜、兎の影を映した月は
他の星に邪魔をされて日を追うごとに姿を隠されてしまいます。
そして、雲。
地上が雲に覆われた夜は、月がどれだけ照らしても兎に灯りは届きません。
月は泣きました。
兎に逢いたくて。
あなたがいなければあたしは笑えない。
神様はそんな月の姿を見ていられませんでした。
貴女はそれ程にも兎の事が愛しいのですか?
それならば年に数回、貴女の兎を想う灯りがいつもより明るく届きやすい日を与えましょう。
ある満月の夜です。
その夜の月はいつもより大きく、そして明るく兎を照らしました。
愛しい兎に想いの灯りを精一杯届けました。
心からの微笑みを。
あたしの想いが愛しい兎に届いて。
人々はその夜の大きく見える月をスーパームーンと名付けました。
今宵はスーパームーン。
今夜は月の周りを流星が尾を引いて流れる。
それはまるで月の涙のようだった。
神様は月に聞きました。
どうしたの?
今夜は貴女の想いがいつもより届く特別な夜よ?
それなのに、何故泣いているの?
月は呟きました。
今夜は兎さんの影が薄いの。
きっとあたしの想いが強過ぎて兎さんは重荷に感じたのかしら…
あたし…
兎さんの居る地上が羨ましい。
だって其処にいる者には仲間が居るから。
此処は…
隣の星?
凄く離れてるのよ、それにあたしの邪魔しかしないわ。
あたしはずっと独りだった。
何千年も…ずっと…
神様は兎と会って話した事を伝えた。
兎は貴女と繋がった事をとても喜んでいたわ。
私はちょっといじわるだけど試させてもらったの。
貴方と月は繋がったの。
もう、餅をつくのをやめて仲間のもとに戻ったら?
月は貴方が孤立してる事を良くは思ってない筈よって聞いたの。
ねぇ、兎は何て答えたと思う?
兎はお月さまの事を想いながら餅をつく事をやめる気は無いって。
集団の中に幸せは無いとも言ってたわ。
でね、兎は集団の中に居なくても孤立してないって。
夜空を見れば、お月さまがこんなに近くに居てくれるって。
お月さまが居てくれるから独りでは無いって。
兎はね、愛しているお月さまが微笑んでくれている。こんなに幸せな事は他にはないと言ってたわ。
私の話を聞いてどう思った?
貴女の想いを兎が重荷に感じたと思う?
きっと今頃、兎は夜空を見上げているでしょう。
そして、貴女の想いの強さを喜んでいるでしょう。
兎も影の薄さには気付いている筈。
そして、影が濃くなる様に一層強い想いで餅をつくでしょう。
兎さん…
あたしのそばに居てくれるの?
ねぇ、兎さん…
居てくれるの?…ずっと一緒に…
あたしのそばに…居てくれるの?
あたしはずっと此処に居るよ。
貴方もずっと一緒に居てくれる?
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