第2章 目的地に到着せよ 4
「あ、そうそう。うちの店は履歴書ってもんはいらないけど。運転免許証のコピーは取らせてもらうからね」
笑い疲れた店長が、思い出したかのように言った。
「いろいろと事情があってこの店で働くわけだから、アンタの過去とか学歴とか女関係は、一切、聞かない。でもね、うちは、指名手配犯と暴力団は雇いたくないの。店の信用と営業にかかわることだからね。だから、アンタが親や女以外の人間から追われていないかを確認するために、免許のコピーは取らせてもらうわね」
財布に手を伸ばしかけた。待てよ。ここで、身分を明かしてよいものだろうか?
「何に使うかって?アンタって細かいのね。ウチの店が逃亡犯かくまってるんじゃないかって疑われたとき、こういう人間雇ってます、健全な経営してますって警察に見せんのよぉ。役人にさ、あれこれ詮索されて疑われるの、アタシ大っ嫌いなのよ!」
店長の迫力に負け、僕は、免許証を出した。アールジェイは僕の手から免許証を取ると、素早くコピー機へ移動した。
「アンタがこの店辞める時は、免許のコピー、ちゃあんと返すわよ。水商売してたってこと、バレると困るでしょ?」
「店を辞めたら赤の他人。店長は、その辺のところ、わきまえてますから」
アールジェイがコピーを店長に、そして免許証を僕に渡した。
「アールジェイ、ありがとねー。うれしいわー。アタシのことわかってんの、アンタだけよー」
店長の言葉に、アールジェイは顔を左右に動かしながら、大きな体を折り曲げた。
突然、店長が、アールジェイを肩を叩いた。
「アールジェイ、あの子、呼んできて。この子の教育係、させたいから」
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