第2章 目的地に到着せよ 3

「きょ、今日からですか!」

 僕は背筋をピーンと伸ばした。

 採用なのか、この店は!

「ただし、2週間以内に店を辞めたら、給料は出さないわよ」

 巨漢の女装野郎こと店長は、ニヤリと笑った。

「え、じゃ、2週間はタダ働きってことですか?」

「いやーねー。可愛くない言い方してくれるじゃなーい?」

 店長は、口をへの字に曲げて、僕を見た。

「アンタがこの店に向いてるかどうか、ホストとしてこの店に貢献してくれるかどうか、2週間様子を見させてもらうってことよぉ。2週間ちゃあんと働いてくれたら、アンタがこのお店で働く気がなくなっても、お給料払いますぅ」

 店長は店中響き渡る声で、答えた。そして

「初対面の割には、憎まれ口を叩くのね」

と言って、豪快に笑った。それまで、黙っていた丸坊主が僕に話しかけた。

「兄さん、うちの店、給料は決して高くないよ。スタートは時給1000円ってとこかな?指名か売上のどちらかトップスリーに入れば時給プラス能力給、どちらもトップスリーに入れば、日給2万は保障する。店のナンバーワンになれたら、有給取れるよ。稼ぎたかったら他の店に行けばいい。すぐにも現金がほしかったら、肉体労働とかイベントスタッフみたいな短期アルバイトのほうがいいって。兄さん、それでも、うちの店で働くかい?」

「脅しちゃだめだよ。アールジェイ」

 店長が軽く丸坊主を制止した。

「アールジェイ?」

 店長が軽く、口に手を当てた。

「あ、紹介しとくわね。彼の名前は、レオナルド・ジェイソン。名前が長いからアールジェイって呼んでんの。こんないかつ顔して、この人、ハーフなの!実は!」

そう話すと、店長は、ひきつけを起こしたかのようにケラケラと笑った。丸坊主は、顔を真っ赤にしながら答えた。

「店長。笑わないでくださいよ」

「だってさ、顔は日本人で体格が西洋人。ホラー映画みたいみたいな名前してるのに、子犬に吠えられて泣きそうになってんのよ~」

 のけぞって笑う店長。

「あ、あの。自分の名前は外国人ですが、英語は全くしゃべれません。日本語でお願いします」

 耳まで赤くなりながら自己紹介するアールジェイ。


 副業とはいえ、変な店に入ってしまった。

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