へ~。そ~なんや~。

「大変なことになりました」

 深く沈んだ声が受話器から聞こえてきました。

 日本人男性からの電話です。

「籍を入れていないフィリピン人女性との間に、子どもができました」

 彼女から認知を迫られて困っている。

 そんな相談だと思い、私はツバを飲み込みました。

「胎児認知しようと思って市役所行ったら、今はダメだ、子どもが生まれてから来てくれ、と言われました。で、子どもが生まれてから市役所行ったら、なんでもっと早く認知しなかったのか、と言われました」

 男性の「困ったこと」とは、「胎児認知ができなかった」ということだったのです。

「フィリピン大使館で子どもの届けを出してからでないと、(市役所で)認知ができないよ、と役所の人に言われました」

 子供が生まれてから、日本の役所で認知の手続きを行うためには、まず、在日の大使館か領事館での子供の出生報告(出生の届け出)を行い、子供の国籍を確定させなければならないのです。

「そうですね。市役所の方のお話の通り、フィリピン国籍の方、つまり、お子さんのお母さんが大使館に行って、お子さんが生まれたという報告をしてください。出生の報告と同時に認知の手続きができます。あ、この認知は、フィリピン側での認知という意味です。日本での認知は、市役所で手続きをしてください」

「あの…」

男性が小さな声で私の説明を中断しました。

「できますよね、認知?」

「えー、それは、フィリピン大使館に聞いて…」

「こんなこと、アンタに言っても仕方ないことなんだけど。ワタシ、役所の人間が信用できないんですよ。大使館で手続きしても、認知できないんじゃないかって、思っているんです。ワタシ、今、人間不信なんですよ」

 男性の話し方は、だんだんと愚痴っぽくなっていきました。

「認知ができるかどうかは、フィリピン大使館に相談して…」

「だいたいね!」

 男性には、私の声が聞こえていないようです。

「胎児認知ができなくなったのは、市役所のせいなんですよ!だから、ワタシ、裁判所に行って市役所を訴えたんです!」

「・・・」

「子どものヘソの緒持って」


 へ?(゜_゜)


 ヘソの緒?


 (ノ゜O゜)ノ


 ちょっと待った!


 子どもを産んだのは、誰ですかっ!ひょっとして、お父さん?


 そこは、DNA鑑定書じゃないんですか~っ!(ノ゜O゜)ノ


 男性が裁判所にヘソの緒を見せた時のことを勝手に想像した私は、その後の男性の話が耳に入りませんでした。

 裁判所の方は、さぞかし驚かれたことでしょう。

 ヘソの緒でつながる父と子。

 うーん…( ̄ω ̄)


 この男性、市役所にも「ヘソの緒」を持って行き、さかのぼって胎児認知を認めるように訴えたそうです。


 過去に

「フィリピン人女性から、子どもが出来たと言われた。男のけじめとして子どもを認知し、女性と結婚した。数年後、子どもは自分の子どもじゃないとわかり、認知を取り消し、女性と離婚した。自分は被害者だ」

と、涙目で私に訴えた日本人男性がいました。

 昔は「キズモノにされた」と女が泣きましたが、今は「傷ついた」と男が泣く時代です。

 男のけじめが男のミジメとならぬよう、男性の皆様、ご注意を!(^0^)/

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