なまら、なまってる?

「彼は英語が話せないのに、どうやってフィリピンに滞在したのか?」

 フィリピン人の担当が首をかしげました。

 窓口には、独特のイントネーションで日本語を話すパキスタン人男性がいます。

「前と同じ書類出してるのに?ダメだって言うんだ?」

 語尾を疑問文のように上げ、パキスタン人は日本語で私に文句を言いました。

 担当によると、申請用紙に年齢を書いてなかったので、書くように担当が英語でお願いしたところ、そのパキスタン人は何も言わず、鬼のような形相で担当を睨みつけたそうです。

 英語が理解出来ないと判断した担当は、私に日本語で年齢を書くように説明するよう指示しました。

「年齢を書いていないので、書いてほしいと担当は申しております」

「そんなの?生年月日見れば?わかっぺや!」

「フィリピンへ最後に行ったのは?」

「去年の?ジューニガツ?」

「前にフィリピンへ行った時は、英語を話していないんですか?」

「エゴ?わかるよ?だーいじょーぶ?問題ねって?向こうに?日本人いっから?だーいじょーぶだって!」

 私が、パキスタン人の話を担当に英語で説明していると、突然、パキスタン人が怒り出しました。

「前の人は?頼んだ時?すぅぐ、書類出してくれたど?なんで?今日の人は?ダメダメ言うんだ?おっかしだろ?」

 更に、その言葉を担当官に話すと担当官は英語で

「こちらの指示に従えないというのなら、ビザは出せない」

と、パキスタン人に言いました。

「英語、わかりますよね?」

 私は、少々、語気を強めてパキスタン人に尋ねました。

「わかるよ?でも、こっちの人のエゴ?なまってかんね?」

 パキスタン人は鼻で笑って答えました。


 なまっているのは、どっちだ?


 日本語の発音がなまっているあなたに、フィリピン人の英語がなまっているなんて、言われたくない!


「じゃ、今の担当の言葉はわかりますね。私は通訳しませんよ!」

 パキスタン人は、鬼の形相で私と担当官を交互に睨みつけていました。

 私がパキスタン人が窓口に提出した書類を返すと、パキスタン人の顔色が変わりました。

「あの…。どうすればいいですか?」

「担当の指示に従ってください。申請用紙に、年齢の他にも記入していない欄があります。きちんと書いてください」

 パキスタン人は小さな声で書類を書き直すと言い、窓口を離れました。


 数十分後。

「よろしく、お願いしまっす!」

 パキスタン人は別人のように礼儀正しくなって、窓口に戻ってきました。

 担当が私に

「あのパキスタン人に、何を言ったの?」

と、聞きました…(-_-;

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