第7話 気持ち悪いヤツ―晶斗


波乱万丈だった初戦は、波乱万丈のまま幕を閉じた。

その日持ち合わせた全集中力と体力を使い切って疲れ果てた僕は、ゲームを終えた後すぐに寝てしまった。

男子高校生っていう青春ど真ん中にいるはずの僕が、寝て起きてゲームするっていう生活をしていていいものかって考えてしまわないこともないけど、かといって上位者闘争マスターズバトルに出るのをやめるのかっていったらそんな選択肢はない。


よく寝たにもかかわらず整理しきれていない頭を抱えたまま、次の日も僕は早めにゲームにログインした。



「よっ。」



シュウも心なしか疲れた顔をしているような気がしたけど、まあそれも含めて恒例の行事って感じだ。僕たちはあくびをしながら、トボトボとトーナメント表が発表になる場所まで歩いて向かった。




トーナメント戦は全4会場に分かれて行う。

あの闘技場で試合が出来るのは準々決勝からで、とりあえず突破したプレイヤーたちはあの闘技場にいくってことを目標にしている奴が多いって聞いた。

でもまだ慣れてはいないけどヒーローをしている僕は、1回戦や2回戦で負けている場合ではない。1回負ければそれで終わりのトーナメント戦にどこかビビっている自分がいたことを自覚していた僕は、そんなところは通過点だと自分に言い聞かせてソワソワしながらトーナメント戦の組み合わせ発表を待った。




ああ、もう早く終わってくれないかな。




あんなに楽しみにしていたはずなのに、張りつめた緊張感に我慢が出来なくなり始めて、もう気持ちで負けてしまいそうになっていた。かといって内心そう思っていることをここで集まっているプレイヤーたちに知られるわけにもいかない。僕は緊張が高まりすぎてしまわないためにも、とにかく全神経を"凛々しい姿勢を保つ"ってことだけに集中させて、何も考えることなくその場に立っていた。



「アレックスさんっ!」



立つことにも必死になっていたその時、後ろから聞きなれない声に呼ばれた。反射的に反応して振り返ると、そこには"気を付け"の姿勢で僕を一生懸命見つめる男のプレイヤーが立っていた。



「僕、ミーシャさんのパーティー入ってます、

ケンと申しますっ!」



そう言って彼は、すごく低く頭を下げた。

なんだか見覚えあると思ってたら、もしかしてこないだのクエストの時一番に死んだやつか。そいつにとって不名誉なことを思い出しているともしらず、ケンと名乗るそいつは見るからにキラキラした目線を僕に向けた。



「あのっ、

昨日ほんっっとにかっこよかったっす!」

「あ、ああ。」



思わず引いてしまうほどの勢いでそういうもんだから、僕は文字通りすこし体を引いて返事をした。


「アレックスさんのプレイは

録画して何度も見てるんですが、

判断力も技を出す素早さもほんと半端ないっす!

僕も何度か練習しようとして…」


それでもお構いなしって様子で、彼は僕のどんなところが好きかと語ってくれていた。最初は少し引いていた僕だったけど、でも直接こんなに褒めてもらうこともそうそうないから、だんだんと気分がよくなり始めた自分がいた。



「今日も応援してます!

頑張ってください!」


しばらく"僕の好きなところ"を語ってくれたあと、ケンは潔くそう言って頭を深く下げた。



「うん、ありがとう。

でもミーシャを一番に応援してあげてね。」



ほめちぎられているという慣れない状況の中でも僕が今想像できる一番ヒーローっぽいセリフを言うと、ケンは相変わらず目を光らせたまま「はいっ!」と元気よく返事をして、また深く頭を下げて去って行った。



ケンが去った後も褒められたことに上機嫌になって発表をまっていると、シュウが横から肘で僕をつっついてきた。



「いいだろ、別に。」



ケンが去ったとはいえまだ周りにギャラリーはいたから出来るだけクールな顔をしてシュウをみると、ヤツは呆れた顔でため息をついた。



"いちいち突っかかってくんなよ。"

"お前もな。"



僕たちはなるべくいつも通り会話をしたはずだったけど、声にならずに目で会話している時点で緊張していることは確かだった。



落ち着けないのは僕だけじゃないか。



"いつも通り"じゃないシュウの行動に少しホッとしていると、いよいよ組み合わせ表を持ったあのヘンテコロボットミニサイズがやってきた。さっきまでふざけあっていたはずの僕たちはそれを見て一気に姿勢をただして、ミニサイズが持っている紙に目を凝らした。



「なんか合格発表みたいで緊張するな。」

「うん。」



優勝するつもりでいるとはいえ、やっぱり組み合わせっていうのは大事ってことは確かだった。


もし初戦でヴァルなんかにあたってしまえば本当に最悪だ。僕たちはその後は珍しく一言も発する事はなかったけどきっと考えていることは同じで、ただただ集中して発表を待った。



「皆さんっ!お待たせしましたっ!」



緊張している僕たちに、ミニサイズのロボットはヘンテコとは違ってシャキッとした話し方でそう言った。その話し方を聞いて緊張が高まり始めて、気が付けば僕たちはさっきのケンみたいに"気を付け"の姿勢でミニを見つめていた。



「これが今年のトーナメント表ですっ!」



そんな僕たちの気持ちなんて知る由もなく、ミニは勢いよく持ってきた紙を掲示板に張り出した。

それと同時に、僕たちだけじゃなくてそこで発表を待っていた人たちが、全員目を凝らしてそのトーナメント表を見つめた。早く見つけたかったのにトーナメント表に書かれた文字は思ったよりも小さくて、最初は自分の名前は全然見つからなかった。



「お、あった。」



しばらく見つめていると、ようやく自分の名前が右側の下の方に書かれているのが見えた。初戦の対戦相手はとりあえず初めて見る名前のやつだったから、一瞬は安心したけど、でも強敵はヴァルだけじゃない。

そう考えると安心したようなしていないような絶妙な気持ちになって、トーナメント表が発表されても僕の気持ちは落ち着かなかった。



そのままヴァルの名前を探そうとしていると、僕とは反対側のグループのシードにミーシャの名前があった。どうやら初戦からは31人しか上がってこれなかったらしく、1位のミーシャはシードになっていた。




体を張って頑張った甲斐があったな。




そう思ってそのまま名前を上にたどっていくと、そのすぐ上あたりにシュウの名前が見えた。




そしてそのまま上にたどっていくと、シュウの名前の2つ上に、





―――ヤツの名前があるのがすぐに目に入ってきた。




「お前、運悪いな。」

「うるせー。」




ヴァルは間違いなく初戦はあがってくるだろう。

シュウも初戦くらいは多分余裕で突破できるだろうけど、2戦目では最悪なことにヴァルに当たってしまう。

自分が決勝に行くまでヴァルに当たらないってことには素直にホッとしていたけど、でもシュウの運の悪さには同情するしかなかった。



「なんでだよ、俺の方が初戦上だったのに…。」

「ま、僕一応去年の準優勝者だし。」



よく考えてみれば、去年の優勝者と準優勝者を初戦で当てる事なんてないか。


発表された今なら余裕をぶっこいてそう言えるけど、それも結果が発表されているからだ。小心者でさっきまで震えていたはずの僕は、ヴァルと序盤で当たるかもしれないってことにかたくなってしまっているシュウの背中を、その余裕な気持ちのまま思いっきりたたいた。



「いっった!」

「頼むぞ、お前。

僕、あのゲス野郎と戦いたくないんだ。」



優勝したい。

その目標を叶えたいのならどこかでアイツと戦わなければいけないと思っていたけど、シュウがそこで倒してさえくれれば僕はヤツに当たらなくて済む。確かに強敵ではあるけど、まだシュウの負けが決まったわけではない。

僕が気合を入れた目でそう言うと、シュウはかみしめるみたいにうなずいた。



「俺も優勝狙ってるから。」

「生意気だな、お前。

僕に勝てるとでも?」

「あたりまえ。

お前の戦い方は俺が一番知ってる。」



確かにヴァルと決勝で当たるより、いつも一緒に戦っていて僕の使う魔法のことを熟知しているシュウと当たったほうがよっぽどたちが悪いかもしれない。




それは確実にそうだけど、

もし決勝でシュウと対決できるとしたらマジでワクワクする。



そのためにはシュウだけじゃなくて、僕だって決勝に上がらなければいけない。


シュウのことを心配しているけど自分だってまだ上がれたって保証はないと、余裕を持った気持ちを立て直して緩んでいたこぶしをグッと握った。




「アレックス~!シュウ君~!」




僕たちが気合を入れなおして初戦の会場に向かおうとしていると、遠くからミーシャが走って来るのが見えた。

緊張しっぱなしの戦いの中で、唯一癒しがミーシャだった。口にはださなかったけどたぶんシュウも同じことを考えていて、僕たちはただ彼女が走って来るのをどこかほんわかした空気で見つめていた。



「シュウ君、3回戦まで行ったら当たるね!」



ヴァルと当たるってことなんて気にもしないで、走ってきて上がってしまった息を整えることもなくミーシャはそう言った。そんな無邪気な姿を見て、さっきまでかたくなっていたシュウが明らかに柔らかくなっている空気を感じた。



「うん、そうだね。

負けないよ。」

「私もだよ~っ!

友達だからって手加減はお互いなしね。」



そう言って、ミーシャはシュウに握手を求めた。その行動に、明らかにシュウが照れた顔をしたのを僕は見逃さなかった。さっきまで僕が気持ちをほぐそうとしたって一切崩れなかった表情が一気に緩んでいくのにすごくむかついて、僕は思いっきりシュウの足を踏んだ。



「アレックスも、頑張ろうね!」

「うん、決勝で会おうね。」



とは言え僕も思いっきり顔がにやけていたんだろう。

僕と同じようにシュウが足を踏んできたのにハッとして、なんとかヒーローの顔を作って僕からミーシャに握手を求めた。



ミーシャはその握手に答えながら、遠慮気味に「頑張る」と答えてくれた。多分全員内心は固くなっていたんだろうけど、3人ともなんとか冷静を保った顔をして、それぞれの会場に向かって行った。




それから緊張を高める暇もなく、あっという間に初戦が始まった。

初戦の相手は初めて上位者闘争マスターズバトルを戦うというプレイヤーらしく、試合前からガタガタと震えていた。



「行かせてもらっていいかな。」

「俺もヒーローになるんだぁーーーっ!」



こいつよくここまで上がってきたな。

サバイバルバトルにはたまにラッキーで上がってくるやつもいる。まさかそんなやつに1回戦で戦えるなんてなぁ…。



昔から僕って席運めちゃくちゃよかったしな~。

球技大会だって岩里さんと同じ組になれたのもラッキーだったし。



必死の形相で相手が向かってくる間に、そんなことを考えるだけの余裕があった。相手は思いっきり僕に何か魔法を唱えていたけど、僕は必死になっているそいつのデコに、控室で変態やろうにしたのと同じデコピンを強めにしてやった。



「いでぇええっ!」

「ごめんな。」



全くかっこよくなかったけど、僕の初戦は30秒で終わった。勝敗が決したアナウンスがなると会場からは割れんばかりの歓声が届いて、気持ちよくなった僕は観衆に向けて片手を軽くあげて答えた。




ヒーローってさいこーーーっ!!!

きっもちいいいぃいい!!!




そして僕はその勢いのまま、2回戦へと向かった。今度の相手は初戦の相手よりは落ち着いているみたいだったけど、"ペンキ攻撃"からの"重力"攻撃で2分で勝利をおさめた。



「ちょっと上手くいきすぎだよな…。」



去年も確か2回戦までは余裕だった気がするけど、こんなにあっさり終わってしまってウォーミングアップも出来ていないことを少し心配した。まあでも勝てたことは素直に喜ぶべきだと自分に言い聞かせながら準々決勝のために闘技場に向かおうとしたけど、まだ試合まで時間があったからシュウの戦いを見に行くことにした。




「おっと…。」



会場に行ってみると予想通りシュウもヴァルも初戦は突破していて、まさに2人の戦いが行われている真っ最中だった。優勝候補が戦っているってのもあって会場はすごい盛り上がりを見せていて、僕の会場よりすごいんじゃないかって無駄な嫉妬をした。



「あ、アレックス!」



人でいっぱいになっている会場をうろうろしていると、前の方で座っていたミーシャが僕を呼んでくれた。座る席はなさそうだったけど挨拶はしていこうと、僕はさっき観衆にしたみたいに軽く片手を上げてミーシャの方に向かった。



「2回戦突破おめでとう。」



さっきトーナメント表を確認したら、ミーシャも順調に勝ち進んでるみたいだった。今年は気合が入ってると言ってただけあるなと思ってそう言うと、ミーシャは少し照れた様子で「ありがとう」と言った。



「お久しぶりです。」



ミーシャの横には、見覚えのある女の人が座っていた。

僕の脳が一緒にクエストに行った時にいたアマンダかって思い出すのと同時に、優秀な口が「久しぶりだね」って挨拶してくれていた。



「どうかな、シュウ。」

「ん~やっぱりちょっと苦戦してる。」



ミーシャのセリフで戦いに目線を戻すと、確かに戦況は平行線って感じだった。しばらく夢中になってその場で試合を見守っていたけど、立ったまま見ていたら誰かの邪魔になりそうだったから、僕は別の場所で見ることにした。



「ミーシャ、僕…。」

「あ、私もうそろそろ別の友達の応援行くから

ここ座ってください。」



その時、僕が去ろうとしているのを察したのかアマンダがそう言って席を譲ってくれた。追い出したみたいで申し訳ないと思っていたけど、アマンダは僕が断る暇もなく颯爽と席を立ってどこかに向かい始めた。



さっぱりした人だなぁ。



そんな無駄なことを考えているうちにアマンダの姿が見えなくなりそうだったから、僕は急いで「ありがとう」とお礼だけ言ってその席に座った。



それからしばらく僕たちは無言で二人の試合を見ていた。

相変わらず試合は平行線をたどっていて、激しい攻防戦が繰り広げられている、、、



…ように見えたけど、僕はどこか違和感を覚えていた。



「う~ん。」

「やっぱり簡単には勝てないよね。」



確かに簡単に勝てないのはそうなんだけど、僕の違和感はそこではなかった。


「いや、違うんだ…。」

「え?」

「多分、ヴァルが手抜いてる。」


見ている人にはシュウとヴァルが互角にやりあっているようにみるのかもしれない。でも僕から見ればどう見てもヴァルは必死な顔をしているだけで本気を出しているようには見えなくて、会場が盛り上がるようなパフォーマンスをしているような感じがした。



「うそ、わからない…。」



ミーシャは僕の言葉にそう反応してジッと戦況を見つめていたけど、やっぱり互角に戦っているようにしか見えないようだった。多分この感覚は、戦ってみた本人じゃないと分からない。


今まさにヤツと戦っているシュウはそれをひしひしと感じているているだろうな。


多分相手が本気で戦ってないってのが、プレイヤーとして一番フラストレーションがたまる。それが分かっている僕はもう見たくないくらいイラつき始めて、今すぐ参戦してつぶしてやりたいような気持になっていた。




氷柱グラソン!」



乱れている精神状態を表すように、シュウが必殺技ともいえる魔法を荒々しく唱えた。



「うっうわああああぁあ~!」




シュウが繰り出した大きなつららをよけきれず、ヴァルはつぶされた。そしてそれと同時にヤツがわざとらしくやられたな声を出したのを聞いて、会場が一気に盛り上がり始めた。


僕たちの席の周りからも、番狂わせだとか下克上だとかそういう声が聞こえたけど、たぶんそうじゃない。僕は盛り上がり続ける会場とは反対に、まだ緊張しながら会場を見つめた。


そのまましばらく見つめていると、巨大なつららにつぶされたはずのヴァルがいつの間にかそこにいなくなっていた。



「え?」



しばらく盛り上がっていたけど、他の観客たちも徐々にそれに気が付き始めて、さっきの盛り上がりとは打って変わって静まり始めた。シュウも周りを見渡してヤツの姿を探したけどなかなか見つからないみたいで、明らかに動揺してキョロキョロとしてた。



「落ち着けっっ!!!」



焦らせることが、ヤツの目論見だ。


そう思った僕が思わず叫ぶと、その声が聞こえたみたいで、シュウは一度こちらを向いた。そしてその後一度深呼吸をして、今度は動揺することなく周りを見渡し始めた。




よかった、落ち着いてる。




安心した僕も、もう一回集中してヤツを探そうと会場を見つめた。

するとその直後、地面に落ちて解け始めていた氷の水の中から、生えてくるみたいにヴァルの手が出てくる音がした。



「下だっ!」



反射的に僕が叫んだのと同時に、ヴァルの手はシュウの足をつかんだ。そしてそのまま"毒の海"みたいなところにシュウを引きずり込んで行った。



「うわぁっ!」



シュウは抵抗していたけど、ヴァルの手はあっという間にシュウをその海に沈めていった。そして何もすることが出来ないままシュウの姿が見えなくなってしまったと同時に、勝敗を告げるアナウンスが鳴った。




「「うわぁああああ!!!」」



会場からは歓声なのかひめいなのか驚きなのか分からない声が上がり始めた。その歓声に合わせて、ヴァルはその海からニョキニョキと出てきて、両手を上げ喜びを表現し始めた。




押されているふりをしてあっさり勝ってしまうなんて、史上最悪なレベルでまじで性格が終わっている。




鳴りやまない歓声と驚きの声の中、僕は相変わらず気持ち悪いヴァルをにらんでそう思った。するとしばらく歓声に答えていたヤツが、僕に気づいた様子でこちらを見て、ニヤリと笑った。




「こわい…。」



隣にいたミーシャが、それを見て吐き出すみたいに言った。




うん、僕も同じ気持ち。




本当はそう思っていたけど、次アイツと戦うことになるミーシャの不安を少しでもぬぐうべく、彼女の背中にそっと手を置いて「大丈夫」と言った。



「そうだよね、

最初から弱気じゃもっとだめだよね!」



励ませているか分からない僕の励ましが効いたようで、弱気になっていたミーシャの顔はいつもと同じように柔らかく変わった。僕はそれを見てホッとしつつ、自分の気持ちも落ち着けるためにも無理やり笑った。



「うん。大丈夫。

ミーシャは自分で思ってるより

ずっと強くなってるよ。」



褒められたことに照れて、ミーシャはうつむきながら「ありがとう、頑張る」と言ってくれた。



「ちょっとだけ、偉そうにアドバイスしていい?」

「も、もちろん!!」


不安になっているミーシャに今僕が出来る事と言えば、あいつと戦ったことがあるって身からアドバイスをしてあげることくらいだった。



それで少しでもミーシャの気がまぎれれば。

そしてそれで、ミーシャがあいつを倒してくれれば…。



僕は全くヒーローらしくもないかっこ悪いことを考えつつ、ミーシャに一つアドバイスをした。そんな僕の気持ちなんて知るわけもなく、ミーシャがとても純粋な目をしてアドバイスを聞いてくれるもんだから、僕の罪悪感はマックスまで高まっていた。



「大丈夫。君ならやれる。」



少しでも罪悪感を払しょくしたくてそう言うと、ミーシャはさっきの不安な様子とは打って変わって強くうなずてくれた。そして僕たちの話なんて聞こえているはずはないのに、ヴァルはちょうどそのころまた僕たちの方を見て得意げに笑った。



きっもぉおおおお!!

やりたくねぇ!!

ミーシャ頼むぞぉおおおおお!!!!



本当は情けなくもそう思っていたことは何とか胸の中にしまって、僕はヒーローらしいキリッとした顔でヤツをずっとにらみ続けた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る