第25話 晴れ時々雨、そして大雨


『おかけになった電話番号は、現在電波の届かない場所にいるか、電源が入っていないためかかりません。』


駄目だ、やっぱり繋がらない。


「やっぱり繋がらん?」

「うん。充電切れてるっぽい。」

何度かけても同じ文言が帰ってくるだけ。


もしかして着信拒否されてるのだろうか、俺の電話番号は。


「まぁまた夕方にでもかけてみれば?流石に繋がるだろ。」

「うん、分かった。」


そうだな。それで繋がらなければ、いよいよ着信拒否が現実味を帯びてくる。されてないといいんだけど……。


「で、どうする?もう帰んのか?それとものんびりして昼飯食ってくか?」

「……いや、今日はもう帰るわ。」


これ以上迷惑をかけるわけにはいかない。まぁ今更なんだけど。


「そうか。まぁ、また何かあったら言ってこい。大した力にはなれねぇかもしれないけど。」

「うん。ありがとな。」


大した力どころか、助けられてばかりだ。柳生が居なきゃ、俺は今頃どうなってたか……。


「今更だろ、お礼とか。今に始まった事じゃないし。」

「それもそうだな。」


立ちあがり、柳生に先導される形で玄関まで向かう。

どうやらまだ他の家族は寝ているらしく、家の中はすごく静かだ。


「ごめんな、休日の日曜に朝から邪魔して。」

「いいって別に。どうせそろそろみんなも起きてくるだろうし。」


まぁそれそうだろうけど、少なくとも俺が少しだけ柳生を早く起こしたであろうことに変わりはない。


「じゃまた明日、会社でな。報告待ってんぞ。」

「はいよ。」

いつも通り、簡単な挨拶を交わして俺は柳生の家を出る。


空の天気は、家に入る前とさして変わらず、今もなお雨は降っている。

家を出る時は雨の雰囲気なんて、全く感じなかったのに……まさか雨が降るなんて思ってもなかったから傘も持ってこなかった。


「ま、そのうちやむか。」


気にならない程度の雨だ。それこそ傘をさすのも馬鹿らしいくらいに。


そうして俺は傘を持つことなく帰路についた。しかし、通り雨だと思っていた雨は家についてもやむことはなく、それどころか再度千咲に電話をかける頃には、太陽も見えないくらいにどしゃ降りになっていた。


今日の降水確率は20%だったのに……本当、天気予報程あてにならないものはない。

まぁ早めに家に帰った俺からすれば、あまり実害はなかったからよしとしよう。




……ちなみに、再度かけ直しても千咲が電話に出ることは、電話がつながることはなかった。時間を変えても繋がらないという事は、つまりそういう事なんだろう。


やっとの思いでした決意は、伝える以前の問題に阻まれ、俺の中にだけ残った。


やっぱり神様なんて、くそくらえだ。俺の思い通りになんて一つもなりはしない。それはきっとこれから先の俺の人生においてもだろう。


そんな自分の運命に、これからの未来に、そして叶う事のなかった千咲への想いに、俺は泣いた。


外の天気に自分を重ねて、全身の水分が枯渇するんじゃないかってくらいにひどく、泣いた………。

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