第15話 せきとめられていたように運命は勢いよく流れ出す

「う、うわぁ………宮島さん、本当に今からこれ食べるんですか?」


鍋一杯に盛り付けられたパクチー。パクチー鍋とか言うらしいけど、こんなもののどこがいいんだ?俺からすればただの雑草なんだが……。


「何言ってんの?食べるに決まってるじゃん。」


まぁ、ですよね。だから来たんですもんね。

でもそこは、冗談に決まってるんじゃん、やだなぁ~、って言ってほしかった。


「本当行ってくれる人いなくて困ってたんだ~。流石に一人じゃ行けないしね。」

確かに。それは俺も分かる。


よくカラオケとかラーメンとか一人で行ける人はすごいと思う。一体どういう心境で行ってるんだ?俺だったら被害妄想が捗って仕方がないんだけど。


でも………

「でも、宮島さんに誘われたら、男はみんな簡単についていきそうですけどね。」


そう、そこだけが疑問だ。

これだけかわいい女性とディナーに行けるのなら、普通の男はまず断らないと思う。それどころか誘われることの方が多そうな気がするんだが。


「あんまり男の人と二人でご飯行くのは得意じゃないからさ。なんでか一君は平気なんだけどね。」


俺としては有難迷惑なんだけど……。


「でもいいじゃん。嬉しいでしょ?こんな可愛い女の子とご飯食べれて。」


自分で俺を言ったら意味がないでしょ。それに俺は全く嬉しさなんて感じてないし。


「はは…まぁ、そうですね。」


本当そうだったらよかったですね。


「なにその反応?俺は仕方なくついてきてやってるだけだし、って感じがすごくするんだけど?」


こっわ!なに?心詠む能力でもあるの?実はそうなの?


「いやだなぁ、はは……そんなことあるわけないじゃないですか。」


女の子って、本当怖い!


「失礼しまーす。こちらハイボールです。」

気まずさに押し負け、流れるようにハイボールに手を伸ばし一口飲む。


「一君ってさ、自分ではうまく隠してるつもりかもしれないけど、意外と態度とか顔に出てるからね?」

飲んでいるハイボールを思わず口からこぼしそうになってしまう。


え?嘘でしょ?マジ?


「あ~あ、傷ついたなぁ~。」


勝手に傷ついてくれてどうぞなんだけど、多分それだけでは済ませてくれないんだろうな……全く、仕方ない。


「すみません、全然そういうわけじゃなかったんですけど、最近プライベートでいろいろとありまして……。」


こうして謝るのも、正直意味が分からないんだけど仕方がない。でないと宮島さんは納得してくれないだろうしな。それに決して嘘を言っているわけじゃないし。


「……本当に悪いと思ってる?」

「はい。」


って言えばいいんだろ?


「じゃあその証拠は?」


はぁ?証拠?そんなもの、こうして謝っていること以外にないだろ。逆にどう示せって言うんだよ。


「いや、特にはありませんけど……。」


あるわけがない。謝る証拠って…初めて聞いたぞ。


「……じゃあ証拠として、明日私と一日遊びに行こうよ。」


――――……は?明日遊ぶ?俺と宮島さんが?

いやいやいや、訳が分からない。どうしたらそうなるんだよ。


「本当に悪いと思ってるなら、行ってくれるよね?」

笑顔でしっかり逃げ道を塞いでいく宮島さん。


悪いと思ってることと、明日俺が宮島さんと遊びに行くことに、何の関係も因果性もないと思うんだけど……。


「……はい。分かりました。」

その笑顔の裏を想像すると断れない。どうせ俺に拒否権なんてないだろうし。


「よろしい。さ、食べよ。もう食べれるよ。」

ひと段落したと言わんばかりに箸を手に取る宮島さん。


そうだ、この雑草のこと完全に忘れてた。

気のせいか?余計匂いきつくなってる気がするんだけど。


「いっただっきまーす。」

「いただきます。」


こうして明日、宮島さん二人で出かけることになった一雪。目の前には最悪のディナー。

もちろん急に食べれるようになるわけもなく、ハイボール片手に流し込むようにして食べることは、必至だった。

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