第13話 (ミライ)
目を覚ますと、夜だった。
窓の外はすっかり暗くなっていて、上を見れば聞いていた通り満天の星が見える。
「おはよう!」
「あたしら今から寝るとこなんだけど」
「ええー!?」
「バーカ」
嘲るようにシーチキンが羽を広げた。
しまった。晩ご飯食べそびれた。この国のご飯結構おいしいのに。
「ああ、ミライ。起きたのか。ちょっと来なさい」
ぎくっ、と思わず肩が跳ねた。
やっぱり思い出してるよね、これ。私が嘘ついたの、バレてる。
「な、なに?」
「おいで」
「えっ、と、ごめんなさい。まさかあんなにあっさり引っかかるとは思わなくて!」
助けを求めてジンの方を見たけど、ジンは「おやすみー」と布団に入ってしまった。
「……怒ってる?」
「怒ってるとも」
両肩に手が乗せられる。思わず、ぎゅっと目を閉じた。
「死なないからって無茶をしたね? 金輪際、自分から危ないことに身を晒しちゃいけないよ」
「え?」
「え、じゃないだろう。頼むからやめてくれ。気が気じゃない。そんなことのために、君を丈夫に作ったわけじゃない」
「そっちなの?」
「他にも怒られるようなことしたのか!?」
珍しく飛び出した大声に、びっくりしてしまう。しまった、墓穴を掘った。
「いや、嘘をついたから。私たちは恋人だって」
「ああ、うん。そうだね。そんなことより……」
「そんなこと!?」
くそう。そこまで意識されてないのか。覚えてない時はあんなにノリノリでデートしてくれたのに。
「そんなことってなによー!」
「なにを怒ってるんだい?」
「もう!」
そうだった、思い出した。もう口聞いてあげないって決めたんだった。
プイッと顔を背けると、レンは困った顔で笑った。
「えっと、もう一つ話があってね。ごめんよ。忘れ薬を飲めなんて言って」
「……」
「君のことを信じよう」
どういうつもりなんだろう。なんで急に、そんなに意見を変えたんだろう?
「なんで急に」
「特大のブーメランが当たったんだよ」
「ブーメランってなに?」
「投げて使う武器でね。投げた人のところに戻ってくるんだ」
そうそうこれこれ。少し、ホッとする。やっぱりレンに物を教えてもらうのが好きだ。
「人の振り見て我が振り直すことにするよ。疑いの先にはなにもない。君は僕が好きなんだね?」
「うん!」
よし。一歩前進だ。君の恋心は勘違いとか言われてたことを思えば、大きな進歩だろう。
「じゃあ、もうお薬飲まなくていい?」
「もちろん。でもごめん。僕は君のこと苦手だよ。恋人にはなってあげられない」
「わかった。なんで?」
解消できる問題なのであれば、善処しよう。
「色恋沙汰が苦手でね」
「そっかー」
なるほど。それで私が苦手なのか。あなたが好きだって言えば言うほど苦手意識を持たれるわけだ。
だからって諦めるつもりはないけどね。
アルケミック・ガール 2 禁断の薬と妖精姫 タイダ メル @tairanalu
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