Step9 最高な一日

「ただいま~、ん?お客さんかな」 

 あーもう、そういうとこだけ察しがいいんだから。

「葵~、友達来てるの~?」

(やばい、ママの足音が近づいてくる…)

「開けるわよ~」

 返事を聞かずに母は扉を開けた。

「あらあら、お邪魔だったかしら」

 母は、私と小谷瀬を交互に見て言った。

「あ、お邪魔しています、小谷瀬と申します」

 小谷瀬は私の母に自己紹介をした。

「小谷瀬君ね、ゆっくりしていってね」

 そういうと母は扉を静かに閉めた。

(もう、ママ勘違いしてないわよね)

「ごめんね、急にマ…お母さん帰ってきちゃって」

 小谷瀬は「大丈夫だよ」と言い勉強を再開した。

 勉強会を始めてから数時間経過、窓の外は赤く染まりだした。

「っんー」

 伸びをし、勉強で疲れた体を癒す。

「ね、小谷瀬君!今日は遅いし、家でご飯食べていかない?」 

 急に扉を開けた母が言った。

「そ、そうだよ!食べて言って」

 突然のことで驚いたが、私も母に続きそう言った。GJママ!

 「じゃ、お言葉に甘えて」 

 少し考えた後、小谷瀬は応えた。

 「うふふ、じゃ、ごゆっくり~」

 意味深な笑みを浮かべたゆっくりと扉を閉じた。

 「リビング行こっか」

 私は小谷瀬に言って一階へ移動する。

 「待っていてね、もうすぐ出来るから」

 母は料理をしながらそう言った。

「手伝います」

 小谷瀬は母にそう言ったが「お客さんに、そんなことさせられない」

 と答えて断った。

 しばらくリビングでくつろいでいると、キッチンからいい匂いがして来た。

 「カレーだ!」

 やはり定番のカレーだ、うちのカレーが一番好き!

「「「いただきます」」」

 食前の挨拶をして、私たちはカレーを口に運ぶ。

 小谷瀬は混ぜて食べない派だった、混ぜていたら戦争になっていたとこだ。

 「ねぇ、葵のどこがいいの~?」

 「ブッゴホオ」

 飲んでいた水が器官に入った。ママ!何てこと聞くの?!

 「笑顔ですかね、初めて話した時の笑顔が忘れられないのです」

 あの「必殺!芹沢スマイリング!」が効いたのね。ぐへへ。

 ぐへ、ぐへ、うへへ、うほほほほほ。

 「葵!なにごはん中にニヤけてるの?」

 「ニヤけてなんかにゃいよ」

 「こんなポンコツだけ、よろしく頼むね」

 母は小谷瀬にそう言っても、私は上の空だった。

 こうして楽しい夕飯の時間は過ぎていったのだ。

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