Step3 話しかける

(さぁHRも終わったし話しかけるわよ)

 「小谷瀬君!今、平気?」

 「平気だよ」

 小谷瀬は小首を傾げて訊く。


 「え、その、今好きな人とかいるの?」

 (ん?今何て言った私?)

 「嫁のこと?」

 小谷瀬は顔色一つ変えずに応えた。


 「そうそう、小谷瀬嫁」

 (よかった~小谷瀬君が馬鹿な鈍感男で助かった…) 

 「そうだな~、俺は『あおい』ちゃんかな?」

 (ん?イマナンテ?葵ちゃんが好き?…落ち着け私勘違いするな。不覚にもキュンって来てしまったが…)

 

「え、なんの『あおい』ちゃん?」

 念のため私か否か確認する。

 「『色々からーず』の『あおい』ちゃんかな?」

 小谷瀬は凄く嬉しそうに言った。


「あ、そっか『色々からーず』か」

 正直少し期待していたので少し残念だ。


「あ、そう、それとね小谷瀬君、私の名前も『』って言うのよ」

 少し癪にさわったので私の下の名前を打ち明ける。

 

 「ッ…!!」

 小谷瀬は赤面していて今にも顔から湯気が出そうだ。


 「本当にごめん、不快な気持ちにさせたよな」

 小谷瀬は平身低頭し許しを乞う。


 「別に不快な気持ちになってないよ…むしろ少し嬉しかった…」


 「そ、それなら良かった…」

 小谷瀬は心底安心したような表情を見せた。


 「…」

 沈黙の時間が続く、でもそれも心地よく、彼と時を共有していると思うと、とても安心するような暖かい気持ちになる。


 「はーい授業始めるぞ~席着け~」

 この雰囲気を壊したのは国語の山田だった。


 「今日は沢山話せちゃった」

 私は恍惚感に浸っていた。


step3 話しかける 終了

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