7・二人の刑事
「おいおい。またお前らか」
店を出てすぐのことに停めていた車に乗り込もうとすると、一人の中年刑事が尚孝たちの方へと近づいてくる。
「それはこちらのセリフですよ。田畑刑事。もう店にはうかがってます」
尚孝は眉間にシワを寄せながら、田畑という刑事を見る。
その隣で柿原が一触即発な雰囲気にオロオロしている。
どうもこの二人は、顔を合わせるたびに火花を散らしている。とくに田畑の方はなにかと尚孝に対して挑発的な言動が多い。それを尚孝が冷静に対応しようと試みているようだが、その表情には苛立ちを露にしている。
「けど、なんの成果もあげられていないようじゃないか。というよりもあれはお前らのようなオカルト集団とは縁のない事件だ」
「なぜ、そう言い切れますか?」
「ありゃあ。ただの人間の仕業さ。お前らのいう呪術的なもの。非科学的なものじゃねえよ」
「そうですか? 根拠は?」
「見ればわかる。被害者は刃物のようなもので斬殺。目もえぐられているがおそらく凶器でえぐって持ち去った」
「なぜ持ち去ったとお思いですか?」
「それはまだわからん。まあ、そういう趣味の変質者ってところだろうよ。とにかく、てめえらの出番はないからな。邪魔するなよ」
そういって田畑は遠ざかっていく。
「あの人、何なんでしょうか?」
「気にするな」
尚孝は、車に乗り込む。
「はい」
柿原も歩いていく田畑の後ろ姿をもう一度振り返ると、すぐに運転席に乗り、車を発進させた。
車が田畑の横を通りすぎる。その際、一瞬目線を合わせた二人だったがそれ以上言葉を発することもなかった。
車が離れていくのを見ていた田畑はたばこを一本取り出して咥える。
ふっと一口飲むと空を仰いだ。
「呪術……。バカバカしい」
そういって、再び一人歩きだした。
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