曾祖父の話

ただの柑橘類

曾祖父の話

 突然ですが、私の家族構成(縁を切っていない人に限る)を紹介します。

 母、父、兄、祖母、祖父、祖母の弟、祖父の再婚相手。

 そして、曾祖父。私からすると母方の祖父。つまりひいおじいちゃん。

 生きてるけどもう何年も会ってないから、顔も忘れました。最後に会ったのが私が小学校の時だから、もう七年は会ってないかな?

 そんな曾祖父ですが、私の家と母の実家……要するに曾祖父が、建てた家はそう遠くはありません。車で二十分走らせたらすぐですよ。隣町だし。

 なんせ母の実家が山中なもんで。冬時はよく母(幼少期)も私も曾祖父の家に遊びに行って、かまくら作ったり犬とじゃれたりしました。

 家にもよく遊びに来てくれて、エゾシカやヒグマのお肉を持ってきてくれました。シカ肉は固いし癖があるけど、私は好きでした。クマ肉は食べた覚えがないけど美味しいってのは覚えてる。なんでだろ?

 まぁ、その時の私は小学生。なんも分からんアホな訳ですよ。だから曾祖父の家に行った時、玄関の横に立派なシカの角が飾られていたり、バンビの剥製があったりしたのがなんでなのか全く分からんくて、曾祖父や一緒に住んでいた祖母によく聞いたものです。

 私が一番目を引いたのは、二つの写真。知らない男性と、曾祖父と、可愛いオスエゾシカの写真。もう一つは、同じ男性と、曾祖父と同じエゾシカの写真。

 ですが、一つだけ違う所がありました。そのエゾシカ、んです。

 この時、私は「なんで死んだエゾシカとスリーショット撮ってんだろうちのひいじいちゃん」なんて馬鹿げた事を考えてました。

 勘のいい方ならもうお気づきでしょう。そう、うちの曾祖父は狩猟をしていた人なんです。

 小学生の時に分からなかったことが、今こうして成長してミリオタになって……ってなると、分かることが沢山増えていきます。

 記憶の隅に残る、写真に写る曾祖父が握る一丁の鉄砲。散弾銃というものだと母が教えてくれました。リロードの必要ないやつでしたっけ。反動が凄いけど、狩猟に特化していて、連続で何発も撃てるっていう……。

 最近、この二つの写真の事を思い出しました。年明けといえば実家帰り、実家と言えば今住んでいるところだけど、母にとっての実家はうちの曾祖父の家だよなって。

 そこで私、これを投稿する昨日、珍しく甘いものを買って来てくれた母に聞きました。小さな頃の母さんの視点から見て、曾祖父ってどんな人だったの? どうして狩猟をしていたの? ってね。

 そしたらこんな答えが返ってきました。(祖父や母は母にとっての祖父や母なので、私にとっては曾祖父や祖母です)

 

 狩猟をしていた理由は分からん。でも、あたしが物心ついた時から、祖父(ひいじいちゃん)は屋根裏部屋で散弾銃を磨いていた。それだけは記憶に残っている。

 今はその屋根裏部屋は無いし、あたしもそこは立ち入っちゃいけないよって母(おばあちゃん)から言われていたけれど、「何してるの?」って言った事はあったよ。

 かっこいいもなんも思わんかったなぁ。でもあたしも小さかったからさ、記憶に残ってんのは、こったらでかいヒグマ(手で表現してくれました。結構デカかった)が死んでる光景とか、エゾシカが首座らんまま死んでたりとか、ウサギが血塗れになってたりとかしててな。「何やってんだろこの人」って思ったわな。でもそのうさぎの毛皮を七五三の時に被せられたりして何だこれって当時は思ったよ。曾祖父自前のスノーモービルで山登ったりとかして、凄い楽しかったなぁ。

 和蘭芹(あんた)が産まれた地元に引っ越したあと(だいたい小学生くらいとのこと)も曾祖父の家に行くのは変わんなかったけど、あまり気乗りはしなかったよ。でも一つだけ楽しみな事があってさ。

 猟犬がいたんだよ。曾祖父の家の裏にな、犬小屋があってん。その犬達と触れ合うのが一番楽しみで、曾祖父の家に行ってた。噛むから近づいちゃいかんって怒られたけど、噛まなかったし? シカ肉とかクマ肉食わせて匂い覚えさせて、狩猟の時に捕まえられるように訓練させてたんだってよ。だからあたし、犬飼ってたし、犬が大好きなんよ。

 

 ほーんなるほど。と思いましたね。

 思えばなんで母が犬好きなのかを知らなかった訳ですから。謎がひとつ解けました。銃とかが好きだったのかは知らんけど、射的が好きな所とかは曾祖父譲りやねって、母は言ってくれました。あとのミリオタは九割型父と兄のせいです。私も兄も、小学生の頃からエアガン触ってましたから。

 かく言う父もミリオタです。私がトイレで夜中に起きた時、ダダダダダダとかドドドドドドドとかあっくそやられたとか、茶の間から声が聞こえてきたりとか銃の音が聞こえてきたりとかしてましたから。中学生の時に父がくれた小説が「SAOOGGO」だなんて私は信じないぞ絶対に。それで沼に引きずられたんだからな! くそぅおそるべし父の影響力。自衛官になろうって思ったのも父がきっかけですし。

 ただ陸上は行きたくはないかなぁと、最初から思ってました。行くなら青い海広がる海上自衛隊がいい! って思いましたし。海大好きですし。錨も桜も艦隊も船も超好きですし。

 うちの地元で一番馴染みのある船って言ったら、上川町っていうちょっとちっちゃい町にある「ガリンコ号」っていう砕氷船ですかね。私が人生で一番最初に乗った船です。イージス艦と同じくらいでかいと思うよ。

 まぁなんだかんだでこうやって生きてきましたが、遺伝ってほんとに偉大だなぁって思いました。親戚の話も結構聞けましたし、そもそも北海道を離れる時にほとんどの親戚と縁を切っていた母が珍しく話してきたのですから、これは執らねばと思った所存です。

 母も私も結構歪んだ家庭環境で暮らしてきたものでして。そりゃあ人と並外れた女の子になるのも納得だよなぁと思いました。現に私も並外れてますからね!

 ちなみに母は、ミリオタではないです。血飛沫ブッシャーなアニメとか、海猿とかコードブルーとか、医者系とか、看護師系とかは好きですけど、ミリタリー関連はかじってる程度にしか分からないとのこと。兄や父が一番詳しいかも。

 ガンダムとか見てましたからね。私の世代はシードディスティニーです。ステラが死んじゃうシーンを一人で見て号泣してました。ステラは私の推しです。

 SFもミリタリーも混ぜたら同じやんと思った所で、今回はここら辺でしめさせていただきます。

 ひいおじいちゃん、1927年位の生まれなのでもう九十超えてます。九十二って言ってました。

 そんな長生きしすぎてるひいおじいちゃんのお話でした。せめて私が帰省するまで生きててくれ。帰省したらあんたに一言言いたいんじゃ。

 狩猟しててくれてありがとうってね。

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