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あの日のことは、今でも時々夢に見る。
俺の(元)妻は、大学時代の同級生で恋人だった。卒業の二年後に結婚。そしてその二年後に彼女の妊娠が分かった。思えばそれが俺の幸せの絶頂だった。
その日、俺は家に忘れ物をして、外回りのついでに取りに戻った。そして俺は、妻と俺の大学時代の親友だった男が、ベッドの上にいるところに出くわしてしまったのだ。
"いやぁぁぁぁぁ!"
妻の甲高い悲鳴が俺の鼓膜を貫く。俺はそのままふらふらと家を出ることしかできなかった。
何よりもショックだったのは、それまで心の底から愛している、と思っていた妻が、一瞬にして気持ち悪い汚物と化したことだ。人の心はこんなに簡単に一八○度変わってしまうものなのか。俺は俺自身が恐ろしくなった。
その後、俺は弁護士の協力の下に粛々と離婚手続きを進めた。妻にも親友にも七桁の慰謝料を請求し、それらは一括で払われた。しかし、その代償として二人は多額の借金を抱える羽目になった。そんな中、妻の子供が生まれた。DNA鑑定の結果、父親は(元)親友だった。だからと言って、俺はもう何とも思わなかった。
二人は籍を入れた。だが、ただでさえ生活が苦しいのに、子供が生まれてしまってはどうにも首が回らない。二人は俺の前で土下座した。助けてくれ、金を貸してくれ、と。
よくもこの俺にそんなことが言えたものだな、と吐き捨てて、俺は早々に二人を追い返した。その結果……二人は無理心中を図った。幸い、発見が早かったので二人とも命を取り留めたが、どちらにも重い後遺症が残った。既に退院しているが、自己破産して生活保護の対象となり、未だにリハビリを続けているらしい。子供は施設送りになったようだ。
その後俺は職場を変えた。それが今の会社だ。俺は過去を忘れようと仕事に一心に打ち込み、成績トップの座に何度もついた。一年くらい経つと、さすがに心の傷も癒えてきた……かのように思えた。
正直、女は引く手あまただ。だが……付き合っても、またすぐ裏切られるのではないか、と、肝心なところで赤信号が灯る。そうなると結局女の方から離れていく。そんなことが何回か続き、今はもう最初からフラグが立ってもすぐにへし折るようになった。結局はそれが誰も傷つかない、最良の選択なのだ。
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