第6話 運営動く
「ハァ?それって本当だったら大変じゃないか。」
「とりあえず、24時間経っての強制ログアウトを、待ってみようと思ってるんですけど。」
「分かった。もしそれでもログアウトできなかったら、
俺が運営に連絡を取ってやる。
紗月は自分のIDを覚えてるか?」
「はい、大丈夫です。」
「よし。」
取りあえず、エイジさんはまた明日同じ時間に、ログインしてくれることになった。
「皐月がログアウトできた場合は、無理やりログインしなくていい。
運営に連絡して、原因がわかるまでログインしないほうがいいだろう。」
「はい、俺もそう思います。
でもエイジさんにいらぬ手間かけさせちゃうかも。何かすいません。」
「いいって。これってけっこう重要な問題だからな。
こんなの頻繁に起こるようになったら困るだろ。
早いとこ運営に対策立ててもらわなくちゃ。」
お前も小さいのに大変だよな。
そう言ってえいじさんは俺の頭をクシャクシャっと撫でる。
「エイジさん、俺、そんなにガキじゃないんですけど……。
やっぱり年齢設定上げようかな。身長ももっと高くして……。」
「いや、それはするな、というかしないでくれ。
俺が原因で紗月が変わったとなったら俺がみんなに恨まれる。」
「?」
何か皆そんなこと言うけど、アバターの設定なんて、個人の自由だと思います。
途中で親方に出してもらった賄飯は二人分。
俺にもエイジさんと同じ賄いを作ってもらいました。
なんか特別扱いしてもらっているみたいですごくうれしい。
「お代は?賄いっていくらですか?」
「今日はエイジのおごりだ。」
親方はにっこり笑ってそう言った。
ご馳走様ですエイジさん。
で、次の日、
俺は前日と同じ席に座り、エイジさんに慰められていた。
「運営にはできる限りの説明はした。
すぐ紗月のIDをログアウトできないか、やってみたそうだが無理だったみたいだ。
なんか大体にして、紗月はログインしていないって言ってたぞ。
お前はこうして此処に居るのに、おかしいよな。
早急に調査するそうだが、こんなケースは初めてという事で、
どれくらい時間がかかるか分からない、と言うのが本音らしい。」
「…はい。ありがとうございました。」
「この件に関しては、紗月が運営と直接連絡が取れないから、しばらくは俺を通しての連絡となるから、何か変調が有ったら、すぐに俺に連絡しろ。」
「よろしくお願いします。」
「しかし、どうやら運営側は100%信用している訳じゃないみたいだ。」
「え?」
「紗月本人ではなく、別人が紗月のアバターを乗っ取って、
その影響でバグが出た可能性も考えているみたいだぞ。」
「なんで…そんな事して何のメリットが有るんですか!?」
「いや、お前自覚してないかもしれないけど、紗月ってけっこう有名だぞ?」
「またまた~冗談言わないで下さいよ。
たかだかネコのハーフ獣人のアバターなんて、
そこら中にいるじゃないですか。」
「信用してないな…。
お前メチャクチャかわいい上にすごく強い。
そのギャップがいい!て評判だぜ。」
「またまた―。そんなの誰にも言われた事ないですよ。」
「だって、お前にチョッカイかけたくても、いつもサリューが目を光らせていて、
紗月に手を出す奴は即排除!みたいだからな。」
初耳です。
ていうか、ゲーム内で俺に友達が少なかったり、
彼女出来ないのはサリューが原因か?
「お前、見た目10歳の子供に彼女って………。」
思わず顔をそむけたエイジさん、でも、その震える肩が思いっきり笑ってるから。
「とにかく、紗月がこちらからログアウトできないと言うのは事実だから、
その間本体がどうなっているかが心配だ。
運営はそちらも含めてすぐさま調査を開始するそうだ。」
「よかったー。
リアルで俺がどうなっているかもすごく心配だったんだ。」
これで少しは目途がついた。
俺はエイジさんとすぐ連絡が付くようにフレンド登録をして、
もう一度お礼を言い、よろしくお願いしますと頭を下げ、ゴッタニ亭を後にした。
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