第3話 謎解きそして…

それから、色々話をしている内に、お互いの話の内容が、微妙に噛合う事に気が付いた。


「三上郡?」


「うん、三上郡。」


「俺も三上郡に住んでいた事あるよ。」


「そうなんだ…。」


サリューと同じ地域に住んでいた事が有ったんだ…。


そしてある日も、


「桜郷小?もしかして神辺の?」


「うん、知ってるの?」


「俺もそこ通っていた事がある。」


「すごい偶然だな。ねえ、皐月は何年卒業?」


「俺、途中で転校したから……。」


「……そっか。」


そして、またある日、


「何と、驚きの同い年って。それは無しでしょ。

紗月のアバターって全然同い年に思えないけど……。」


「悪かったな。

アバターってのは本人の好き好きなんだからな。

それにサリューだって同じ年に見えないぞ。随分年を盛ってないか?」


「まあ、ね。」


そう、俺たちはその時15歳になったばかりだったんだ。


「このキャラ自体が好きだったから、試しに好き勝手に設定してみたんだよ、

そしたら条件の相性が良かったのか、結構強い奴が出来ちゃってさ、変更するには惜しくなったんだ。」


「で、そのままレベルが上げたって訳か、見かけによらずけっこう強いよね紗月って。」


「サンキュ。」


「で、同い年で桜郷小って、もしかして私達会ってるかも?」


「あっ?」


「……改めて、私はサリュー。本名は小手川那津だよ。よろしく。」


そう言ってサリューは右手を差し出した。


俺はその手をそっと握り、サリューの顔を見つめニヤりと笑った。


「久しぶり!紗月やってる鳳皐月だ。」


そう言って掴んだ右手をぶんぶん振り回した。


「な、何だって。鳳って、皐月って。紗月は、鳳さんちの皐月!?」


「おお、今更だが、懐かしいなあ。」


「なぁんだ~~。」


知らなかったとはいえ物凄い偶然だった。

俺たちは、幼稚園の頃からの幼馴染で、ずっと一緒に遊んでいたんだ。

でも、俺が小学校3年生の時、東京に引っ越しが決まって、

その時は離れたく無いと言って、二人で抱き合って大泣きしたほどだ。

転校した後も帰省する度に、機会が有れば会いに行ったけど、

やはり、年齢も上がれば、男女の中では恥ずかしさも出てくる。

会う事もだんだん少なくなり、疎遠になっていった。


でも、そんなこんなで、お互いのリアルでの素性が判明してからは、

前にも増して、ゲーム内で遊ぶようになった。

やっぱり、幼馴染っていいよな。

周りに冷やかされずに、男女なんて関係なく遊べるんだぜ。

おまけに遠く離れていても毎日ガッツリ遊べる!

考えてみると凄いよな。


ちなみに那津は人間型のアバター、年齢設定は20歳ぐらい。

職業は騎士、髪はシルバーにブルーアイで、クールな雰囲気で背が高い。

宮廷騎士っぽい蒼くてパリッとした衣装を身に付けている。

キャラはかなりの美形で、女子受けしそうな感じだ。

武器は、剣の二刀流。

こいつの家は、元々剣道の道場をやっているから、得意分野だと思う。

両手に剣を持ち、ばっさばっさと魔物に切りつける姿は、

格好良くて惚れ惚れするほどだ。

でも、改めて見て見ると、やっぱり何処か、那津に重なる所があるんだ。

驚く事に、性別は男なんだって。


俺はと言うとハーフ獣人、ネコタイプ。

猫耳と長いシッポを付けて、ちなみに手と足もモフってみました。

毛並みは薄いパステルミント。

体格は小柄。

だって猫って小さくってかわいいものだろう?

職業は闘士で必殺技はネコパンチ。

剣の代わりに爪を立てて切り裂く事もできるぞ。

戦闘力が少し落ちるけど、魔術師系も少し入れた。

何となく猫って、魔法使いの使い魔っぽいって思うんだ。

性別はサリューと同じ、男だよ。


でもネコ好きの俺はアバターを作る時、けっこうノリノリにネコ愛全開で作ったんだけど、それが仇になった。

やりすぎた。

すっげ可愛いんだよこいつ。

それにかなり強そうだ。

可愛すぎて変更できない…、作り変えれない…。

でも、このアバターって俺が動かすんだよな。


「まあ、知り合いがいる訳でもないし、別人になり切るのもオンラインゲームの醍醐味だよな。」


で、俺はそのまま決定をクリックしたんだ。




「皐月さ、さっきは何パニクってたの?」


あぁ、さっきの話か。

俺はスーパーのごみ箱に、食べ終わったアイスの棒をぽんと捨てた。


「いや、今考えてみればおかしな蜃気楼を見たんだ、多分…。」


「蜃気楼?」


「いや、白昼夢かな…。」


「何よそれ。」


「落ち着いて考えればあり得ない事なんだ。

もういいから忘れてくれ。」


「何だよ……。」


那津が心配してくれているのは分かってる。

こいつは度が過ぎるほどの心配性なんだ。

でもそんな深刻な事じゃないんだよ。

たかだか真夏の夜の夢ならず、真夏の昼の夢。

そうタカをくくっていた俺が甘かったのかもしれない………。



次の日、那津を誘って近くの渓谷に遊びに行く事になった。

地元じゃぁかなりの人気スポットで、夏場はかなり混んでいる。

田舎のルールで、上流では魚を釣るから泳いではいけない。

でも既定の場所から少し下流では、泳げる所も有るし、

浅瀬では、水遊びも出来る。

幸いにして俺達の家からそこまでは、

自転車でも行ける距離だから、かなり嬉しい。


「皐月ー。」


「おー、今行く。しばし待て。」



外で那津の叫ぶ声。

母さんが、まったく女の子の方から迎えに来させるなんて……、

とぶつぶつ言っている。

分ってるけどさ、俺たちは昔からこんなだったんだよ。

水着はすでに服の下に装着済み。

俺はタオルや食料を入れたバックを掴み、

行って来まーすと勢いよく玄関から飛び出した。

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