第11話 裏の裏は裏?

 「先輩?」

キョロキョロと声の場所を探す動きをした後、俺を見つける。

 「やぁ、どうしたんだい誠一郎君。まさか1人はぶられて私に慰めて貰いにきたのかい?」

 どちらかと言えば先輩の方がはぶられていたような気がするがそれを言うのはやめておこう。

 横に立ち先輩の手元を見るとまだ1本しか飲み物は買われていなかった。

 「手伝いますよ」

 「そうか、ありがとう」

 なんだろういつもと違って大人しい先輩に言葉が出なくなる。いつもなら大声でわめき俺に突っ込まれるところだがそんな気分ではないらしい。そんな日が彼女にあること、いやこちらが普段なのだろうか。分からない。けれど聞くこともできない。そんなことを考えていると向こうから話しかけてくる。

 「ところでどうかな?うちの部は、仮入部と言わず今すぐ本登録したくなっただろう?」

 「どうですかね。まだ何も解決してないですからね」

 「そうだな。しかしそれはそんなに大事なことかね?大切なのは雰囲気だ。いかにも部活やってる感、青春している感にこそ意味があると私は思っているのだが」

 薄っす、この人薄っぺら・・・・

 「今、薄いって思っただろ?」

 「いや、そんなことないですよ」

 「気にしなくていい。薄いと分かっていっているのだから感動されても困る。だがその薄さにこそ意味があると私は睨んだ。そしてその薄っぺらさがこの学校で一番似合う生徒!それが君だ!」

 どう考えても馬鹿にされているのだがどうにもこの勢いに負けてしまい言い返せない。そもそも薄っぺらさナンバー1と言うが本当に全校生徒に確認をしたのだろうか。ちゃんと薄さ確認をしたうえでペラペラの紙に『葛城誠一郎』と書いてあったのなら認めよう。

 「因みに厚さナンバー1は私だ」

 いや、厚さっていうより熱いです。暑苦しいです。

 「俺より薄いでしょ・・・」

 「酷いこと言うな。君は」

 なんだかさっきまで俺が眺めていた美少女はどこへ行ったのだろう。残念なことに目の前にいるのは頭の悪そうな残念な先輩1人だった。

 「そろそろ戻ろうか。うんこしてると思われても困るしな」

 女子高生がうんことか言わないの。

 気が付くと横の棚には全員分の飲み物が置かれておりよくわからないお褒めの言葉を頂いている間に買い終えたらしい。

 「半分持ちますよ」

 「ありがとう、流石に帰りどうしようか悩んでいたのでな」

 2人してガチャガチャと音を立てながら部室への道を進む。外は少し日も落ちてきて西日がまぶしい。

 「何か聞きたかったのではなかったのかね」

 「いや、今度にします」

 「そうか、じゃあ今度に取っておこう。私は普段好きなものは最後に取っておく派だからな」

 無言の時間が続く。夏を目指し始めた春とは言え校舎の隙間から入る風は冷たさを残している。手に持つ飲み物もそれを手伝ってかより寒さを感じさせてくる。

 部室の前にたどり着くと会議に飽きたのか好きな漫画の話をする声が聞こえてくる。扉の前で一言、先輩が言う。

 「とりあえずお試し期間はめいいっぱい楽しんでみることだ」

 「そうさせてもらいます」

 がらりと扉を開くと、サボっていた我々に不満と疑いの声が響いた。

 


 「お前ら連れしょんか?うんこか?」




 いや、佐竹・・・お前もか・・・・

 あんただけは違うと思っていたのに・・・・・糞。













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