第10話 3点
次の日の放課後、さっそくラノベ研にアイデアをもって行く。来週とか言ってた気がするけど・・・まぁ早い方がいいだろう。アイデアと言ってもポテチ食べながらUNOの合間に適用に出した苦し紛れの策だけど。
「やぁ!!ごきげんよう!!」
全然ご機嫌に見えない。えっ?俺らなんか日を間違えた?って顔してる。いや、あなたたちは間違って無いです。間違っているのは学救会の方です。
どう考えても俺の決定ボタンが壊れてる。
「あれ?部長さん、それに皆さん来週のはずじゃ・・・」
「すまん、部活中に。ただ一つアイデアが浮かんだので早い方がいいかと思ってさ。そっちが良ければ今から話をしたいんだが」
さらっと場をまとめようとする辺り佐竹先輩はこの部には宝の持ち腐れなのではないかと思えてくる。
「まぁいいですよ。ほんとは生徒会への発表用の資料を作る予定だったんですけど。幸い3人とも揃ってますし」
佐々木先輩は嫌な顔せず了承してくれる。そして後ろの1人見たこと無い部員を紹介してくれた。
「こいつが1年の正田。正田こちらは学救会って俺たちと同じ同好会の人たちでこの部が存続できるように手助けしてくれる人たちだ」
佐々木先輩に紹介された少し小柄で童顔の青年はペコリと頭を下げる。
「どうも、正田です。今回はよろしくお願いします。先輩方・・・」
と言いかけて俺の顔を覗き込む。
「あれ?君、葛城君だよね」
はて?どこかで会っただろうか?同じ1年だしそういうこともあるだろう。だが俺には記憶がない。
「まさかとは思うけど・・・同じクラスなんだけど・・・」
またまたぁ、そんなベタな展開。お母さん許しませんよ。
「何組?」
「B組」
ばっちり、一緒だったわ。
「いやほら俺、目が悪くてさ・・・」
「葛城君の席、1番後ろじゃん・・・」
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
「まぁ、そういうことでとりあえず中に入ってもいいかな?」
佐竹先輩が話を変える。これ幸いと全員、その話に触れるのを止めた。
なんだこれ、俺、絶対残念な子と思われてるよね。
全員が揃ったところでこちらの案をラノベ研に伝える。伝えるのは俺と佐竹先輩と中山先輩だ。神坂先輩は合いの手を入れる役かな・・・?
「なるほど。チラシ自体は過去にやったことあるけれど色んなパターンってのは試したことないな」
「今回は俺たちも含めて人手はあるだろうから数もさばけると思うんだよね」
「でも肝心のチラシの内容はどうする?俺らラノベ研だけど絵が描けるわけではないし。そっちに描ける人いるのかな?」
残念ながら俺は美術センスに溢れている。姉が俺の絵を現代のピカソと呼ぶぐらいにセンスが有り余っている。ちなみに俺が授業で描いたのはクラスメイトの顔だ。その幸運な少女は次の日学校を休んだ。
「そうだな。残念だけど俺ら3人とも絵は得意というほどではないな。葛城はどうだ?」
「その件ですけど、ただのチラシだと誰も読まないと思うんですよ」
「その通りだ!やはりここは学救会をメインにしたチラシを・・・」
中山先輩、それ鈍器じゃないですかね?てか居たんですね部長。キャラどんどん薄くなっていってませんか?
「なぜ殴る?いい案だと思うのだがな?それぞれあと1人で部に昇格同士、手を取り合って・・・」
こぶが2つに増えました。
「なにか案があるのか?」
「ラノベ研の人たちの主な活動ってラノベ読んでワイワイ感想言うのがメインとかでいいんですかね?」
「そうだね。一応、発表としておすすめ図書の紹介ブログとか色々発信はしてるけど」
「それを使うのはダメですか?」
「なるほどな。それは良いかもしれないな」
約1名を除いて理解してもらえたようだ。
「チラシに僕らのおすすめラノベ紹介を書けばいいんですね?」
「ざっくり言うとそうですね」
「確かにちょっと読んでみようかなってなるかもしれないね」
副部長の木田先輩も賛同してくれる。
「なんなら紹介者の写真とかいれるといいかもしれないよ。ほら人の顔写真とか載ってると少し捨てにくくなったりしない?」
「それで一度やってみましょうか。せっかく提案してくれてるんだし。3人もいいかな?」
佐々木先輩の問に反対するものはおらず『ラノベ紹介チラシ作戦は』決行が決まった。
あれ?これ俺しか仕事してなくね?
そのあとは印刷をどうするのか。紹介する内容の割り振りや写真も一応、撮ることのした。
大して仕事をしていない神坂先輩はというとみんなのジュースを買いに走っていた・・・パシリじゃん・・・。
話し合いがヒートアップするにつれ雑談や好きな作家の話に脱線していくのはお約束だ。
喉が渇いていたものの神坂先輩の帰りは少し遅くトイレにも行きたかったのもありついでに様子を見に行くことにした。
教室を出て購買部の方へ向かう。通りのトイレに立ち寄り用を足した後、自販機の方へ向かうと自販機の前で腕組する神坂先輩の姿が目に入る。
先輩は真剣に悩んでいるようで俺に気が付いていない。その姿は黙っていれば誰もが思わず付き合ってくれと言いたくなるような美しさだった。こんな顔もするんだなこの人。少し近づきがたさも感じる。この人は本当はどんな人なのだろうか。
少し悲しい顔にも見える。いや気のせいだろう。よし、声を掛けよう。
なぜか自分が気合を入れていることにかすかな違和感を感じるのだった。
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