第五章

~第五章~


上倉宅を後にした前村は渡辺がいる刑務所に向かった。

刑務所に着いた前村は面会届けを提出し待合室に向かおうとした。

しかし前村は、ふと見たことのある名前を書いて提出されている面会届けを目にする。


窓口の人間に声をかける。


「あの、そこにある面会届けは私より前に提出をされた物ですよね。」


「あ、はい。そうですが。」


「そこの一番上に置いている紙を見せてもらえませんか。」


「これですか。......どうぞ。」


『なぜアイツが...。』


そこに書かれていた名前は『児島直』だった。


渡辺に上倉の事を聞きたい所だったがこうなっては児島本人に先に問いただす必要がある。

面会をキャンセルし職場に戻った。


部屋に入り真っ先に児島を探す。

目に入るのは佐伯だけだった。


「お、どうだった?上倉の所は。」


呑気な顔で聞いてくる佐伯にイラつく。


「今そんなことはどうでもいい!児島はどこだ!?」


「なんだよ...そんなことって。俺は俺なりに心配し......」


「児島はどこにいったって聞いているんだ!」


佐伯の言葉に被せるように問う。


「はいはい。みんなと一緒に新しい山を捜査に行きました!」


佐伯も少しイラついている。


「そうか...。すまん、少し取り乱した。」


「いや、良いけどよ。何があった?」


「渡辺の面会にアイツも行っていた。」


「は?何でだよ。」


「分からない。それを聞くために急遽戻ってきたんだ。」


「そうか。まさかアイツが共犯だったのか?」


「勿論可能性はゼロではない。」


「これは中々デカイ話になりそうだ。」


「まだ何も分かっていないんだ勝手に共犯扱いはするなよ。」


「そ、そうだな...。」


「今回の山は大きいのか?大きければそれなりに戻りは遅くなるか。」


「そうだな。まぁざっくり言うと殺しだ。」


「殺し?」


「そうなんだよ。それに、殺されたのは推定で数年前。白骨化して身元も分からねぇんだってよ。」


「そうか。それなりに大きい山になりそうだな。」


「まぁ戻りは17時ぐらいになるんじゃねえか。」


「今から8時間後か...。」


「まぁ待つしかねえな。」


「ちなみにどこで発見されたんだ?」


「今から行くってのか?」


「8時間も待ってられない。」


「まぁ好きにしな。住所は確か......」


正直前村の中では白骨化した死体よりも今は児島が面会していたことの方が事が大きかった。


「そうだそうだ、青山一丁目だ。」


「青山一丁目だな。了か...い......青山一丁目って。」


「お、そうだ。セルジーの本社も青山一丁目だったか。」


「そうだ。」


『数年前の死体...セルジーの本社近く...何かあるのか。』


「行くのか。」


「あぁ。やはり関係があるとしか思えない。」


「まぁ気を付けろよ。最悪のパターンを想定すると万が一児島が共犯だったら何か動いてくるかもしれない。」


「わかった。有り難う。」


そう言って出ようとしたその時、社内連絡網に一本の連絡が入った。


『捜査本部を立ち上げる。』


「捜査本部か、やっぱでかい山だったんだな。」


佐伯が呟く。

しかし、驚いたのは次の文章だった。


『捜査本部を立ち上げる。』


.........


『そして、白骨死体の重要参考人として公安二課所属『前村修平』を連行する。』


『俺が...重要...参考人...?』


前村の思考回路が宙を舞った。

回路を繋げたのは佐伯だった。


「前村、お前...」


「そんなわけ無いだろ!」


「だ、だよな。」


......


「逃げろ。」


「え。」


「この3日間やってきたことが全て水の泡になる。それだけは防いで欲しい。だから逃げろ!」


「あ、あぁ。......佐伯...済まない!」


そう言って二課の部屋を飛び出し宛もなく走り続けた。


~第六章予告~

セルジー本社近くで発見された白骨死体。

その事件の重要参考人として上げられた名前は前村だった。

理解できない状況に前村は立ち尽くす。

そして渡辺の面会を行った児島はどういう意図があるのか。

第六章乞うご期待!

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