第三章
~第三章~
渡辺との面会が終わり帰路で見た政治家の記者会見。
計画と関係があるのか、そんなことを考えているといつの間にか所に着いていた。
公安二課の部屋に入ると早速声をかけられる。
「修平。ちょっといいか。」
課長の『福添浩二』だ。
「あ...はい!」
我に返り返事をする。
無言で歩く課長の後ろを付いていく。
喫煙所に入り萎れた箱からタバコを一本取り出しおもむろに火を付ける。
「どうだ。お前も吸うか?」
「いえ、大丈夫です。」
タバコは止めて2年が経っていた。
「そうか...。呼んだのは既に感づいているとは思うが、単独捜査の事だ。」
「は、はい。」
やはりか、と覚悟はしていたものの鼓動が早まる。
「なんの捜査をしている?」
「それは......」
「なんてな。知っているよ。」
「え?」
「セルジーの汚職事件の捜査を続けているんだろ?」
「なぜそれを...。」
「課長ってのは情報網が広くなるもんだ。それにしてもなぜまた。」
「すみません...。どうしても8億の行方が知りたくなりまして...。」
「あれは研究費という話で方がついているはずだ。」
「ですが、8億という研究費がどうも府に落ちず...」
「それで、何か分かったのか?」
「はい。実は今朝渡辺に話を聞きに行きました。」
「渡辺が面会に応じたのか。」
「はい。許可が降りたのは15分でした。」
「なるほど。」
「ですが、その15分で核心には至らなかったものの大きな情報は手に入れました。」
「そうなのか!?」
課長は半分ほどしか吸っていないタバコを灰皿に捨てた。
「はい。ですがこの話はいくら課長であってもお話は出来ません。」
「何を言っている。報告は義務だぞ。」
「ですが、あくまで単独捜査です。課長に迷惑を掛けることは出来ません。」
「しかし...。」
「核心が付ければ必ず報告をします!」
「そうか...。分かった。だが、一度終わった捜査を掘り返す、ましてや単独で。これがどれだけ危険なことかそれだけは肝に命じておくんだ。」
「分かりました。有り難う御座います。」
タバコを吸うには長すぎる喫煙所だった。
デスクに戻ると話しかけてくるのはやはり佐伯だった。
「バレたのか?」
「あぁ。」
「どうするんだ?」
「捜査は続けると話した。」
「課長は許してくれたのか?」
「あくまでも知らない体で居て貰ってる。」
「この2日の間でバレてるんだ、上にバレるのも時間の問題じゃないか?」
「だとしても俺は続ける。なにせ針の穴ほどだが光が見えたんだ。」
「まぁそうだろうな!サポートは任せろ!」
「佐伯...。有り難う。」
「何改まってんだよ!」
少し痛みが残るほどの力で肩を叩かれる。
「明日は例の政治家の家族に聴取に行ってくる。」
「俺に何か出来ることは無いのか?」
「いや、佐伯も知らない振りをしてくれていればそれでいい。」
「そうか...。何か手伝える事があれば何でも言ってくれ!」
「あぁ。」
その時一瞬デスクの裏側で視線を感じた。
そこに座っているのはキャリア入社の後輩『児島直』だった。
「何ですか?」
児島が迷惑そうに問いかける。
「いや、何も無い。」
「なんの話をしているのか分かりませんけどプライベートな雑談だったら外でやってもらえませんか?気が散って仕事が出来ないので。」
「あぁ、すまない。」
純粋に反省をした。
~第四章予告~
課長にバレるにしても早すぎる期間。
誰か自分の動きを報告している人間がいるのではないかという不信感。
視線を感じた先にいた『児島直』の存在。
今後の展開に乞うご期待!
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