黄色の実

―黄色の実― 香港アクション


 「チェン!あなたは人質の救出に向かって!」

 青い実時とは異なり、わたしはどこか暗い建物の中で美女と相対していた。

 「えっと、なにするんだっけ?」

 台詞も頭で描いたままが口に出た。

 「ふざけてるの?私たちは香港警察で、今は人質となった令嬢を救出にいくところでしょ?わたしはマギーよ!」

 マギーは銃を構えてありがたすぎる説明口調で述べた。

 「絶対に戻ってきてね。わたし、あなたに伝えたいことがあるの」

 後ろから大勢の人がこちらに駆け寄る気配が迫った。

 「行って!幸運を祈るわ!」

 わたしは慌てて進行方向に足を向けた。

 行けと言われてもどこに行けば良いのかと悩んだが、道が安心安全な一本道。

 わたしは目の前の階段を駆け上がるとわかりやすいほどに人質となり、柱に縛られた哀れな少女と、見るからに悪人が葉巻を吸っていた。

 そこここに悪人の部下がこちらを伺っている。

 わたしは腰元を探った。

 しかし、ない。

 マギーが手にしていた銃がわたしの手元にはない。

 「は?」

 わたしは非武装状態であることを指し示すために両手を顔の横に広げて後退る。しかし、奴らは間合いを詰めてきた。

 とっさに足が出る。

 ものすごい蹴りが目の前の男のほおを殴打した。

 すごい爽快感だ。これは良い。

 テンションがあがり襲いかかる男たちにカンフーをお見舞いした。

 彼らがどのように攻撃を仕掛けるのか手に取るようにわかる。

 これぞなろうの真髄だ。

 あらかた倒した後、目の前の葉巻をくわえた悪人を挑発した。

 彼は上着を放り投げるとわたしの方へわかりきった容易い蹴りを

 「痛い!」

 見切れなかった。

 死ぬほど痛い。そして死ぬほど蹴りが速い。

 こんなに痛いとは聞いていない。

 わたしは蹴られるまま追い詰められた。背後は断崖絶壁で、はるか下方にダンボールが敷き詰められている。

 求められている行動は理解した。

 「できるかーい!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る