第6話 喪女は喪女
クリスマスに誘ってくれてから、私は翠ちゃんのことばかり考えるようになっていた。それはもう、自分でも気持ち悪いぐらいに。
――翠ちゃんは、なんで連絡くれないんだろう。
新しい年を迎えてもそうした思いが
「おはよー!あっけおめ~!!!」
朝8時25分。
かわいい女子は大体みんな遅めにやって来る。翠ちゃんも例外ではない。
前方の扉から教室に入り、グレーの大きめマフラーを首から取りながら歩く翠ちゃんに話しかける、女子たちの黄色い声が響いた。
「あー!翠~。おはよー!!!」
「翠、髪切ったのー?ボブ、ムッチャかわいい~」
「かわいい!?かわいい!?ありがとー!!!」
茶色いポニーテールを黒く染め直し、バッサリ顎下まで切った翠ちゃんがキャハハと笑っていた。私の横は無言のまま通り過ぎ、席に着く。
チャイムが鳴る。
斜め後ろに座っている翠ちゃんに話しかけるタイミングを失ったまま、私は黙って俯いた。
午前中の授業が終わり、昼休憩になった。
私は翠ちゃんのほうを振り返った。視線が合う。
「み、翠ちゃん……」
私が小さな声だったから聞こえなかったんだと思う。翠ちゃんは私から視線を外し、スクールバッグからピンク色の財布を取り出して席を立った。
「まりえー!!!お昼買いに行こー!!!」
と言って、
――きっとはっきり話しかけられない私が悪いんだ。
私はそう自分に言い聞かせながら、鞄からお弁当を取り出し、机の上に広げた。
――別に今までだってひとりでお弁当食べてたんだから。
そんなことを思いながらお母さんの作ってくれた日の丸弁当にパクついたものの、味は全くしなかった。胸が痛い。
「寺内ってさー、昼ひとりなん?」
隣で菊間くんとお弁当を広げている相宮くんが、唐突に私に話しかけてきた。
――無神経な男だな、オイ!
――ひとりで食べてたっていいじゃん、別に!
――好きでひとりで食べてるわけじゃないのに!
――私にはお昼一緒に食べる友だちとかいないだけです!!!
私は内心腹を立てて、視線を横に向けることもなく
「うん」
と答えた。
相宮くんは「ふぅん……」と答えたきり黙ってしまった。
「怖っ」と呟く菊間くんの声が聞こえた。
――私のことなんか放っといて……
私はひとり。今までも、これからも、ずっとひとりでいるのがお似合いなんだから。
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