第7話 喪女、ギャルに出会う
期待するとね、期待した分失望するから、私は期待を持たない。
勉強はいいの。自分の努力次第でどうにでもなるから。教科書に書かれている回答覚えて、要するに500点取ればいいゲームだ。
でも、人間関係は違う。他人の心なんて自分の期待通りになった試しがない。私が努力したところで、相手の気持ちがどうにかなるなんてことない。
だから、私はいつも片想いだし、私にはいつも友だちはいない。
逆にそれ以上の関係になるのが怖い。いつか期待外れだと言われて、傷つくのが怖いんだ。
だから、これ以上、私には近づかないでください。
思ってたのに、なんで翠ちゃんは私なんかに近づいてきてくれたんだろう?
――学校、行きたくない
家を出てきたものの、ここから学校へ行くのが嫌で仕方がない。
内野井駅までやって来たのが限界だ。
今日もきっと翠ちゃんに話しかけても無視される。
お昼もひとりで食ってんのか、寂しいヤツなんだなと、クラスメートには思われているに違いない。
勉強しかできない暗いヤツだと陰口叩かれてるんだ、きっと。
「……学校、行きたくない」
思わずつぶやいて、駅のロータリーにしゃがみ込んだ私の後ろで声がした。
「……嫌なら、学校ぐらい行かなくてもいいんじゃね?」
驚いて振り返ると、そこには金髪の色白ギャルが立っていた。リキッドのアイライナーでがっつり縁取られた目には、付け睫毛。さらにマスカラがたっぷりついていてパンダ目になっていないのが見事だ。薄紫色のオフショルダーのニットからは肩が、黄土色のショートパンツからは脚が丸出しで、この寒いのに風の子か!?と言いたくなる。
「え!?泣いてんの!?!?!?……どんだけ真面目ぇ!ひくんですけど~」
「……なっ!泣いてるんじゃないもん!!!」
見ず知らずのギャルに指摘され、私はごしごしと制服の袖で目をぬぐった。
学校に行きたくなくてお腹が痛い……朝食べたもの吐きそうになっている人の気持なんか、この子には分からないに違いない。
多分この子も私とは住む世界が違う。あなたみたいな自由に生きてそうなギャルには、私のことは分からない。
「は~?泣いてないの?なんじゃそら?……まぁ、いいけどさ。学校行かないんなら私に付き合わない?」
「……え!?でも……学校が……」
「学校、行きたくないんじゃないの?」
「え!?……あ、うん……でも……」
「え?行きたくないんでしょ?」
「うん……でも……」
「でも、何?」
「……えーっと。お母さんが……」
「はぁ?あんた、親のために学校行ってんの?」
「……いや、違うけど!」
「違うけど?じゃ、誰のためなん?」
「……えっと、それは…………」
――自分のため?
ここまで話して、言葉に詰まった私を、目の前のギャルが見つめる。薄茶色のカラコンが入った人工的でいて神秘的な瞳だ。
「……ちょっとさぁ!」
沈黙したまま俯く私の腕を彼女がバシンと叩いた。
「学校、行きたくないなら、一日ぐらい休んだってどってことないよ!ほら!行こ!!!」
ギャルが私の左腕を強引に掴んで、引っ張って歩き出す。
「体壊すぐらいなら無理すんなし!!!」
彼女は言った。
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