第2話 喪女、キラキラ女子に絡まれる
「
膝上10センチの短いプリーツスカートの裾がふわふわ揺れている。寒いのに生足である。ムダ毛すらない。
「ムッチャ勉強したでしょー?」
「……えー……?……うん……まぁ……そうだね」
なぜ私なんかに、学年一の美少女・七條さんが話しかけてくれるのか分からず、挙動不審におどおどしながら、なんとか言葉を喉元から絞り出して答える。
チアリーディング部に所属している七條さんが、勉強するぐらいしか取り柄のない、コミュ障の、自分の如きオタクにも優しく話しかけてくれる理由が分からない。なにかの罰ゲームか?
「ホントすごいよ!私も勉強教えてほしい!!!」
七條さんはポニーテールを揺らし、眩しい笑顔を向けた。シャンプーのいい匂いがする。
正直なところ、七條さんのようなキラキラした眩しい女子に
腰の部分を織り込んで短くしたスカート方見えるすらりとした脚と自分の大根あしが並ぶのも恥ずかしかったし、頭の大きな自分が、小顔でスタイルの良い七條さんと並ぶと引き立て役にしかならないのも無様だ。
「ねぇ!
七條さんが
自分には縁遠いスクールカースト上位のキラキラモテ女子&モテ男子に絡まれて、胃がキリキリ痛むのを感じた。心臓がバクバクと激しく脈打っている。顔が耳まで真っ赤になっているのが分かる。
ここだけの話、私はおこがましくも、
アニメキャラクターとかアイドルと同じ感覚で、話したいとか付き合いたいとかいうんじゃなくて、相宮くんがいると学校楽しいなとか、うきうきするだとかいう気持ちになる。その気持ちはきっと恋なのだと思ってはいたけれど、所詮磯の鮑の片想いだ。私は彼には釣り合わない。だから、私は気持ちを隠して、遠くからただ彼を
――ああ……もう眩しすぎるので、私には関わらないでください。
顔がタイプすぎて相宮くんを直視できない私は、小鼻までずり落ちたレンズの分厚い黒ぶち眼鏡を直すふりをして俯いた。
「ホント!ホント!寺内さん、年間通じて学年トップ死守してんじゃん!」
相宮くんは、私の気持ちなどには、もちろん無頓着だ。
緊張で固まっている私の顔を、不思議そうに首を傾げて眺めるとか、やめてくれないか。
「いや……べ、別に……。相宮くんだって、学年で上位でしょ?私が教えられることなんてないです……よ」
私は、相宮くんに視線を合わせることなく、蚊の鳴くような声で答えた。
好き避けしているのが、傍で見ている人たちには伝わっているであろう。顔が真っ赤だ。喉が渇く。
「あー!そっかー。龍紀、案外勉強できるんだったねぇ!!!」
やっとの思いで言葉を発する私に、七條さんがにこりと笑って手を打った。相宮くんもうんうんと首を縦に振って満足そうに相槌を打つ。
「七條!お前と一緒にすんなよ」
笑顔でじゃれ合う美男美女を横目で見ながら、私は引き攣った笑顔を浮かべ、仲間に入ったほうがいいのか、この場から離れていいのか分からないまま、居心地の悪い時間を過ごした。
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