幕間5 三悪人は空の下で



 マルコットの町を見下ろす高所に、三つの人影がある。


 角の男と、ロングコートの男の間で、包帯の男――ライドウは思う。

 眼鏡のロイドのことを。

 最初の遭遇時。殺気をぶつけてみたときに感じたものは、なんとなく面白そうなやつ、程度の印象。

 ダークドラゴンに絡んだ一連の流れの中で発揮した手腕は、見事と言えよう。腹の黒い……、いや、いっそ清々しいほどに無色の、その内側も含めて。

 ライドウは、コートの男――LOWに尋ねてみる。

「旦那は、あの眼鏡の坊主をどう思った?」

 LOWが答える。

「見たままの印象だが……彼は俺以上に、の扱い方が上手そうだ」

「……旦那が言うほどか」

 呟くように問えば、一つの頷きが返ってきた


 ――そしてライドウは、角の男を見る。


 彼の佇まい。

 枯れた井戸の中で静かに溺れるような息苦しさが、隣に立つ男にはあった、と思う。

 だが今、

 あのロイドとの出会いによって、胸に満ちる十分以上の生きがいを得たと言える彼の様子に。

 そこにある、間違いのない、愛情に。

 ライドウは問う。


「なあ、大将。

 あいつは…………

 眼鏡のロイドは、あんたにとっての、なんなんだ」


 問われて、彼は。

 ローブの衣嚢かくしから、両手を抜き出した。

 黒。

 一枚の闇で形作られた両手を持ち上げて、きわめて慎重に、顔を覆うフードを上げて。

 解放。浴びるように、風を受けて。


 彼――オートは、愛おしそうに微笑んだ。


「弟さ」





 後編へ続く

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