第五章 決戦準備
save21 ルミランスター
ロイドと別れて、しばらくの時間が経過した。
宿を決めたエリスは、取った部屋でくつろいでいる。
ロイドへの伝言を記したメモは、少し多めの礼とともに使いの子供に持たせてある。
人と会うための身だしなみは整えておいた。惑わしの魔宝石の効果も切ってある。そのまましばし待っていると、ノックの音がした。
ドア越しに、声がかかる。
「姫?」
「うむ!」
戸が開く。ロイドが四人の男女を連れて、部屋に入ってくる。
「おお、そちらの方々が」
「うん。こちら、Aクラス冒険者、ルミランスターの皆さん」
四人が並ぶ。
全員が二十歳過ぎ。ようやく半ばに差し掛かろうか、というころ。
エリスは胸に手のひらを当てて、彼らを迎えた。
「――はるばるの来訪に感謝を。ルシーナ・エリス・プリンセシアである。どうかエリスと呼んで欲しい」
剣士らしき青年が、前に出た。
胸に拳を当て、頭を下げる。
「ご尊名をお預かりできますこと、光栄の至りに存じます。
ルミランスより、応援としてまいりました。
騎士団所属、並びに、ルミランスターのリーダー。貴族ノートン家が第ニ子、クリスティアン・ノートンと申します。どうぞ、クリスとお呼びください。エリス様」
「うむ。……王国騎士とAクラス冒険者を兼ねているとは。まさしくルミランスのための輝きと言えよう。父君も鼻が高かろうな、クリスよ」
クリスティアン・ノートン
貴族 剣士
レベル 125
筋力 91
技力 246
魔力 70
体力 108
耐久力 84
バンダナで、洒落た様子に髪をまとめた青年が続く。
「おお、これほどまでに美しい姫君にお目見えできて、まことに恐悦至極にございます。……なんて柄でもないんですがね。俺はカーティス。職業盗賊。どうぞよろしく願います。 ああ、けれど姫のお美しさに対しての言葉は、本心ですよ」
ひょうひょうと、気負いなく。
「ふふ。世辞であろうとも嬉しく思うぞ」
カーティス
盗賊
レベル 117
筋力 50
技力 218
魔力 96
体力 72
耐久力 31
「……ザスーラと申します」
兜を脱ぎ、膝をついて最敬礼をする。鎧を着込んで盾を背負った、黒肌の青年。
「無口なヤツなので。勘弁してやってくださいよ」
カーティスの言葉に、エリスは大らかな笑みを浮かべる。
「武人の寡黙に腹を立てる姫がどこにいようか。
多くは語らぬ。さながら沈黙の鉄の塊といったところだな」
「……過分なお言葉、痛み入ります」
ザスーラ
騎士
レベル 121
筋力 92
技力 88
魔力 24
体力 121
耐久力 257
「あっ、わっ、わたし、ユキともうしますです、シューターをやっておりますっ!」
くせの強いたっぷりとした黒髪を流す女性が、真っ赤な顔で口を開く。
「おお、ということは空を飛べるのか。うらやましい」
「こっ、光栄でしゅっ!」
目を閉じて、天井に叫ぶように。
「……違う意味で口下手なんで、ご勘弁願いますよ……」
「なに、なんとも可愛らしいではないか」
ユキ
シューター
レベル 109
筋力 10
技力 302
魔力 190
体力 56
耐久力 18
全員と挨拶をかわす。
彼らは先日ロイドが連絡を受け――ルミランシティで支度を整えたときに、連絡先の交換をしていたらしい――合流する手はずになっていた者たち。
ルミランス側からの厚意である。無下にする気は毛頭なかった。
彼らについては、事前にこんな会話が交わされていた。
『姫。突然だけれど、ルミランスターというパーティーを知っている?
この通話機で話をしたのだけれど、ルミランスから応援に来てくれるんだ。
姫の意向を、折り返し連絡したいのだけれど、どうだろう』
『うむ、喜んで受け入れたいとお伝えしてくれ』
『ありがとう』
ロイドが言った。
「姫。
さきほど皆さんからお聞きしたんだけれど、戦王さまが無事国を出たそうなんだ。問題なく、やってほしい、だって」
「そうか。 ……言伝に感謝を」
ロイドに答え、ルミランスターに会釈する。
「それじゃあ、ぼくは皆さんと一緒に、魔王さんのところまで行ってくるよ」
「うむ」
事前に予定は立てていた。
「クリス、カーティス、ザスーラ、ユキ。勇者の付き添いを、頼んだぞ」
「……はい。微力なれど、尽くさせていただきます。エリス様」
四人が、胸に手を当てて、頭を下げる。
「どうかよしなに」
エリスは礼を込めて、部屋を出ていく彼らを見送った。
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